政府は清算主義に走ったのではないか

森永卓郎・経済アナリスト、独協大学教授
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森永卓郎氏=武市公孝撮影
森永卓郎氏=武市公孝撮影

 9月10日に小池百合子東京都知事が臨時の記者会見を開き、東京23区内で、酒類を提供する飲食店の夜10時以降の営業自粛要請を9月15日で終了すると発表した。同時に、都民に対する都外への不要不急の移動自粛も解除することを表明した。

 新型コロナウイルスの感染状況が緩やかながら改善しているというモニタリング会議での専門家の意見を踏まえたものだという。

 この東京都の動きを受けて、赤羽一嘉国土交通相は、翌11日に、GoToトラベルキャンペーンに10月1日から東京都への旅行と東京都民の旅行を加える方針を明らかにした。さらに政府は、イベント規制に関しても、プロ野球などの大規模イベントで、収容人数の50%以下という規制は残すものの、9月19日から一律5000人以下としてきたこれまでの人数規制を撤廃するとした。さらに、演劇や映画館など声を出さずに鑑賞するイベントでは、満席も認めることにした。政府は、経済再開へと大きくカジを切ったことになる。

 東京都も政府も、感染者数が減少傾向にあることを緩和の理由として挙げているが、本当にその判断は正しいのだろうか。小池知事が自粛緩和を発表した9月10日の東京都の新規感染者数は276人だった。第1波が収束傾向となり、東京都が休業要請を解除した6月19日の新規感染者数は35人だった。政府が7都府県に緊急事態宣言を出した4月7日でさえ、東京の新規感染者数は87人だった。なぜ276人もの感染者を出しておいて、感染が収束傾向にあると判断できるのだろうか。

 確かに、過去1週間の平均でみると、新規感染者数は8月上旬をピークに、緩やかな減少傾向にある。しかし問題は、なぜ第2波の感染がピークアウトしたのかという分析がしっかりなされていないことだ。

 新規感染者減少の理由を東京都も政府も明らかにしていない。ただ、私には、仮説がある。それは気温だ。インフルエンザが冬季に流行するの…

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森永卓郎

経済アナリスト、独協大学教授

1957年生まれ。日本専売公社、経済企画庁、三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)などを経て独協大経済学部教授。専門はマクロ経済、計量経済、労働経済。コメンテーターとしてテレビ番組に多数出演。著書に「年収300万円時代を生き抜く経済学」(光文社)など。