岩手「感染者ゼロ」の教訓(下)国は「カネを出し口を出すな」

達増拓也・岩手県知事
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達増拓也氏=野原大輔撮影
達増拓也氏=野原大輔撮影

 新型コロナウイルスの感染者ゼロが続く中、「感染者第1号」の方について「県として優しく接する」と言い続けてきた。「ゼロ」は目標ではない。感染拡大を防ぐことが重要だ。「第1号」が確認された際、感染された方の会社には攻撃的なメッセージが100件ほどあったというが、その半面、「よくぞ検査を受けてくれた」などの感謝や励ましも100件ぐらいあったという。非常にありがたいことだと思った。

 ただ、ゼロを維持する必要はないが、感染者数は少ない方がいいというのは当然だ。感染を防止するには、人と人との接触を少なくすることだ。人の行動に制限をかけることであり、感染防止対策を強めれば強めるほど、接客を伴う業態を中心に影響を与えることになる。「感染防止対策」か「経済対策」のどちらを優先させるかという議論になりかねないが、この二つをトレードオフとして論じてはならないだろう。経済を重視するから感染防止対策の手を抜いていいとはならない。そもそも無理にアクセルを踏んでやらせようとしても、人々は安心して動くことはできない。例えば、席と席の間にアクリル板を立てたり、定期的に消毒をさせたりするよう促し、支援し、徹底させる。このような感染防止対策をきちっと行っていけば、それに合わせて徐々に社会経済活動が活発になっていく。「感染症対策なくして社会経済活動なし」だ。

 このため、観光業界への支援策「GoToトラベル」は、感染拡大が収束しないと効果は見えてこないだろう。元々、感染拡大の収束後の経済のV字回復を狙う事業だったが、それを感染者の多い東京を除外して7月から前倒しでスタートさせたため、準備不足もあって混乱した。ただ…

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達増拓也

岩手県知事

 1964年生まれ。外務省職員、衆院議員(当選4回)を経て、2007年岩手県知事選で初当選。現在4期目。