潮流・深層

米国の民主主義が崩壊する日は来るか?

古本陽荘・北米総局長
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大統領候補討論会で、郵便投票について「これまで見たこともないような詐欺が起こる」と主張したトランプ大統領=米中西部オハイオ州で2020年9月29日、AP
大統領候補討論会で、郵便投票について「これまで見たこともないような詐欺が起こる」と主張したトランプ大統領=米中西部オハイオ州で2020年9月29日、AP

 11月3日の米大統領選が近づくにつれ、選挙の結果を巡って相当な混乱が起きるのではないかという懸念の声が強まってきた。当初は、再選を狙う共和党候補のドナルド・トランプ大統領(74)が負けた場合、結果を受け入れないのではないかというトランプ氏の往生際の悪さに注目が集まっていた。だが、それを超え、トランプ氏が大統領選の制度を悪用し、居座ることを狙うのではないかという策略論への警戒が広がっている。

 米国の憲法は、各州の利害を調整しながら生まれた妥協の産物だ。だが、英国から自由を求めて独立した各州は、米国に独裁者が現れて人々の暮らしを支配することがないよう権力を分散させることに成功した。行政、司法、立法府の緊張関係、連邦政府と州政府の役割分担により、時には混乱しながらも、お互いをけん制し合うことで誰かが暴走することを防いできた。

 ただ、大統領選出に関する憲法の規定には「欠陥」があったかもしれない。間接的に大統領領を選ぶ大統領選挙人(elector)に関する制度のことだ。この制度を悪用すれば、民主党候補のジョー・バイデン前副大統領(77)に実際には選挙で負けていても、「合法的」に居座ることが可能性かもしれない。

 大統領選の制度を振り返ってみたい。各政党が州単位で党員集会や予備選を行い、それぞれの大統領候補を絞り込み、夏の全国大会で正式に党の候補者を決定する。各党の大統領候補によるテレビ討論会や各地での遊説などの後、「11月の最初の月曜日の次の火曜日」に各州で投開票される。形式上は、候補者本人にではなく、その候補に投票する選挙人に票を投じる。全米50州と首都ワシントンDCには計538人の選挙人が割り振られる。それぞれに割り振られるのはその州の上院議員と下院議員を足した数だ。過半数の270人以上の選挙人を獲得した候補が勝利する。

 選挙制度の説明は普通、ここで終わる。だが、実際の手続きには続きがある。大接戦に…

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古本陽荘

北米総局長

1969年生まれ。97年毎日新聞入社。横浜支局、政治部、外信部を経て2018年12月から北米総局長(ワシントン)