官僚「忖度」で足をすくわれた安倍政権 安保関連法などは評価

平沼赳夫・元経済産業相
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平沼赳夫氏=野原大輔撮影
平沼赳夫氏=野原大輔撮影

 「自主憲法制定(憲法改正)」「拉致問題解決」など日本が一丸となって取り組まなければならない大きな課題を重視する安倍政権に対しては、大きな期待をし続け、成し遂げてくれたことも多い。中でも、安全保障に関する重要情報の漏えいに重罰を科す「特定秘密保護法」を制定したことや、集団的自衛権の行使を限定的に容認し安全保障関連法を成立させたことは、安倍政権の大きなレガシー(遺産)だ。「自分の国を自分で守る」という“普通の国”への大きな一歩だと評価したい。

 しかし、安倍晋三前首相の宿願だった憲法改正や拉致問題解決は、道半ばで終わってしまった。実行する意欲も力もあり、支持率も高く、「安倍1強」といわれる強固な権力を誇ったにもかかわらずだ。これはなぜか。

 それは政治主導の下、官僚の使い方の「失敗」があるからではないか。この二つはともに政治生命をかけなければなしえないことだ。しかし、安倍政権は、リーダーシップを強めるあまり、官僚の能力を生かしきれなかったと思える。

 日本の官僚は非常に優秀だ。政治がある方向性を決めれば、さまざまな知恵を駆使して実現できるよう解決策を示すことができる。そして、重要なのは、その責任を取るのは政治家だということだ。方向性を決めることと、責任を取ることは、民意で選ばれた政治家にしかできない。

 だが、官僚が優秀さゆえに、政治を牛耳ることも少なくなかった。そこで安倍政権では、内閣人事局を設置し人事権を通じて官僚ににらみをきかせるようにした。政権が考える政策を推し進める態勢を整えたといえよう。

 しかし、それが官僚たちを萎縮させ、保身に走らせるようになってしまったのではないだろうか。官邸に意見を言いにくい状況ができてしまったようだ。これでは官僚が実力を発揮することができない。憲法改正や拉致問題の解決のような、日本の政治資本を全て費やさなければできないような大きな課題をクリアするには政治主導で一丸とならなければ成し得ないであろう。

 この結果、官僚は国民ではなく、官邸の方ばかりを見るようになってしまった。そして横行したのが「忖度(そんたく)」だ。憲法改正への…

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平沼赳夫

元経済産業相

 1939年生まれ。会社員、衆院議員秘書を経て80年衆院選(旧岡山1区)で初当選。運輸相、通商産業相、経済産業相、たちあがれ日本代表、次世代の党党首などを歴任。郵政民営化に反対し、2005年に離党勧告を受けて自民党を離党。15年に復党。17年衆院選に立候補せず、政界を引退。