逢坂誠二の「耕雲種月」

核燃料サイクル、政治が「中止」決断を

逢坂誠二・衆院議員
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逢坂誠二氏=宮本明登撮影
逢坂誠二氏=宮本明登撮影

 先日、原子力規制委員会が青森県六ケ所村の使用済み燃料再処理工場について、新規制基準に適合していると判断した。しかし、これは単にプラントがある一定の基準を満たしたというだけのことであり、核燃料サイクル政策が妥当かどうかの判断をしているものではない。規制委員会は、規制基準に合格したからといって、安全を保証するものではないと繰り返し言っている。より安全度が高まるのは事実だと思うが、事故は起こりうるということだ。

 再処理工場を実際に稼働させるには、それぞれの部品のチェックが必要になる。部品の数は膨大だ。再処理工場は1993年に着工し、当初は97年に完成するはずだったが、いまだ完成していない。最初に作ったものは、経年劣化しているはずだ。実際の使用済み核燃料を使ったアクティブ試験(試験運転)を実施したので、すでに汚染されて人が近づいて点検できないところもあるはずだ。そう考えると、規制基準には合格したものの、それぞれの部品をチェックし、稼働できる工場足りえるのかどうか。簡単なことだとは思えない。

 そもそも核燃料サイクルは、破綻状態だ。

 一番の原因は、日本の原子力発電所が使用済み核燃料の処理をどうするか決めないままに、この50年進んできたことにある。結果的に今、1万9000トンの使用済み核燃料がある。核燃料サイクルでは、この使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を作る。しかし、原発でMOX燃料を使えば、今度は使用済みMOX燃料が出る。使用済みMOX燃料は発熱量が高く、使用済み核燃料以上に取り扱いが面倒だ。しかも、使用済みMOX燃料は今の段階では再処理できない。理論上、あるいは試験としてはできるけれども、実用の技術として再処理できるかどうかはわからない状態だ。核燃料サイクルは、使用済み核燃料対策の先送りでしかない。

 コストの問題もある。政府は核燃料サイクルのコストを明らかにしていない。3年ほど前アメリカへ行き、アメリカが核燃料サイクルをやめたのはなぜか取材をして歩いた。最大の理由はコストだった。技術的な難しさもあるが、コストが高すぎて、発電した電気を皆さんに使ってくれなどとは言えないとのことだった。核燃料サイクルはマーケットの原理に合わないということで撤退をしたという。日本政府はそのことについては全く言及していない。

 政府は核燃料サイクルのメリットとして、新たな燃料ができる、高レベル放射性廃棄物を減容化でき、有害度も低減できると説明している。

 しかし、新たな燃料ができるということに関しては、すでに海外などで再処理をして取り出したプルトニウムが45.5tある。プルサーマルで使うにしても、消費できるのは原発1基で年間0.3トン程度だ。建設中の大間原発が稼働すれば、年間1.1トンのプルトニウムを消費することになるが、すでに数十年分以上ある。今あるプルトニウムを使うだけでも精いっぱいで、それさえ使いきれるかどうかわからない状況なのに、「新しい燃料ができます」という説明は理解できない。政府の説明は、意味がないと思う。

 減容化については、政府は高レベル放射性廃棄物の体積が4分の1になると説明している。確かに、使用済み核燃料を再処理すれば、高レベル放射性廃棄物の量は4分の1になるが、MOX燃料もできるし、ほかの廃棄物も出る。MOX燃料を使えば、さらに使用済みMOX燃料がでる。政府は、高レベル放射性廃棄物だけに着目をして「減容化」といっているに過ぎない。それは私からすればまやかしだ。政府がいう「減容化」は虫が良すぎる。

 それから、有害度合の低減についてだ。使用済み核燃料をそのまま放置しておくと、天然由来のウランのレベルにまで戻るのは10万年かかると言われており、再処理で高レベル放射性廃棄物にした場合はこれが、8000年から1万年になるという。しかし、10万年が8000~1万年になるというのが、人類にとってどれほど意味のある時間短縮なのか。人類の歴史を考えると1万年は途方もない時間であり、人の生活を考えた時に、この短縮がどれほどの意味があるものなのか疑問だ。

 メリットだと言われているものが、本当にメリットといえるのかどうか冷静に考える必要がある。

 使用済み核燃料を…

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逢坂誠二

衆院議員

1959年生まれ。北海道ニセコ町長を経て、2005年衆院初当選。総務政務官、首相補佐官、立憲民主党政調会長などを歴任。衆院北海道8区、当選4回。立憲民主党。ニセコ町長時代に全国初の自治基本条例となった「ニセコ町まちづくり基本条例」を制定。地方自治のエキスパートとして知られる。