菅政権はどこに向かうのか

田中秀征・元経済企画庁長官
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田中秀征氏=宮武祐希撮影
田中秀征氏=宮武祐希撮影

 菅義偉首相は、国というバスを運転するには、極めて優れた運転手になり得る逸材と思ってきた。特に柵(しがらみ)を断ち切っても前に進むことができる突破力には稀有(けう)なものがある。

 だが、今のところ、彼が運転し始めたバスには肝心の行き先が示されていない。このバスに乗って早1カ月、国民は、どこに連れて行かれるのかと次第に不安が募ってきている。

 「行き先」はこれから、国会での所信表明や施政方針の演説で明らかにされるはずだ。施政方針は予算の趣旨説明のようなものだが、所信表明は、首相自身の理想、哲学、信念を語るものだ。この際は、国民の関心がとりわけ所信表明演説に集中している。首相は簡潔明快に「どこに向かうのか」を力説してほしい。

 かつて参院の議長を務めた河野謙三氏が、どんな社会を目指しているかという質問に「自然に抱かれた素朴な生活」と答えたことがある。こんな言葉によって彼の目指す社会像や国家像がイメージとして明白になったと感じたのを覚えている。とにかく、不器用でも自分の言葉で語らなければ、聴く人の心奥には届かないものだ。「総合的、俯瞰(ふかん)的」というような意味不明な官僚用語は二度と使わないほうがいい。

 折か…

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田中秀征

元経済企画庁長官

1940年長野県生まれ。東京大学文学部西洋史学科、北海道大学法学部卒業。83年衆議院議員初当選。93年6月に新党さきがけを結成し代表代行に就任。細川護熙政権の首相特別補佐。第1次橋本龍太郎内閣で経済企画庁長官などを歴任。福山大学教授を30年務め、現在、福山大学客員教授、さきがけ新塾塾長。主な著書に「日本リベラルと石橋湛山――いま政治が必要としていること」(講談社)、「判断力と決断力――リーダーの資質を問う」(ダイヤモンド社)、「自民党本流と保守本流」(講談社)、「平成史への証言」(朝日新聞社)。