菅首相「鉛」でいい 金メッキははげる

亀井静香・元建設相
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亀井静香氏=玉城達郎撮影
亀井静香氏=玉城達郎撮影

地方を弱くした安倍政権

 安倍政権が長期政権になったのは、一つは小選挙区制度が理由だ。強力な政治家が出てきにくい制度だ。サラリーマンみたいな政治家ばかりで、首相に向かって「やめろ、俺にやらせろ」と言う政治家が出てこなくなった。

 もう一つは安倍(晋三前首相)さんは安全運転ばかりで、本来なら取り組むべきことに取り組まなかった。大事なことというのは、地方再生だ。口では言っていたけれども、やらなかった。

 今、地方は惨憺(さんたん)たる状態だ。すべて東京にカネもヒトも集まるような時代になってしまった。そういうなかで、政治家も地域の利益を代表するような、骨太い、土の匂いがする政治家が出てこなくなった。安倍さんも山口県選出だけれども、しかし3世だ。人柄はいいが、銀のさじで育ってきている。学校も東京だ。あらゆるものが東京に集まるようになった結果、地方に軸足を置いた政治家がいなくなった。

野党も弱い

 地方が弱くなったから、強い野党も生まれなくなった。昔は田舎に根を張った党があった。いまは、労組、大企業の組織労働者に軸足を置いた野党しかいなくなった。

 野党は外交や防衛、経済政策について、もっと鋭角的に、政府と逆のことを言わないといけない。白を黒と言っても、黒を白と言ってもいいから逆をやる。アンチテーゼをぶつけないといけない。私だったら、トランプ(米大統領)や習近平(中国国家主席)のポチになるな、とやる。

 日本維新の会のような新自由主義的な政策を掲げた野党がいくらできたところで、それなら自民党がやっている。こうなれば自民党政権が長く続くのは当たり前の話だ。

民は自民党に飽きている

 もっとも平家物語ではないが、いつまでも自民党政権が続くかというと、そういうわけにはいかない。矛盾が出てきている。民(たみ)から飽きられてきた。飽きられるということは憎まれるより怖い。憎まれる場合は悪いところをなおせばいい。飽きられるというのは対応が難しい。

 野党が弱いから、今解散すれば自民党は勝つかもしれないが、しかし、人為的な努力だけでは大きな歴史の流れを変えていくことは難しい。今、解散して勝てば(衆院議員の任期の)4年という時間を得ることはできる。しかし、4年という時間を得ると政治がだれてくる。そして経済が駄目になってくる。そして経済が駄目になれば政治もまた駄目になる。

 アベノミクスでは結果として金持ちがより金持ちになり、下積みの人間がより落ち込んでいった。庶民の生活は良くなっていない。大企業、あるいは大企業にぶら下がっているところ、社会の上澄みだけが良くなった。だから社会に活力がない。芸術・文化の面でも花盛りとはいえない。魂を揺り動かすような作品が生まれているだろうか。人間の才能が羽ばたいていない。残念だ。

菅首相は初心を忘れるな

 今度、久しぶりに土の匂いがする、秋田から出稼ぎで出てきた菅義偉首相がようやく現れた。菅首相が誕生したことには、歴史的に見ても、中央に代わって地方が出てきた、という意味がある。

 しかし油断していたら、権力を握った途端に変質する危険もある。木下藤吉郎も草履取りからはいあがった。庶民のつらさはよくわかっていたはずだが、結局、天下をとるとああいう体たらくになった。初心忘るべからず、だ。

 私は菅氏が衆院に立候補した…

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亀井静香

元建設相

1936年生まれ。62年警察庁入庁。79年衆院初当選。13期。運輸相、建設相、自民党政調会長、金融担当相などを務めた。2017年衆院選に出馬せず引退した。