「コロナ長期化」を見据えた抜本改革が必要だ

武見敬三・自民党国際保健戦略特別委員長
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武見敬三氏=須藤孝撮影
武見敬三氏=須藤孝撮影

 危険な感染症の拡大が起きると、個人の健康だけではなく、日常の社会活動や経済活動が深刻なダメージをうけることが今回の新型コロナウイルス禍ではっきりした。国の基本に関わる脅威であり、安全保障上の脅威だという認識が共有されるようになった。

 国は感染拡大を阻止するだけではなく、経済活動をいかに維持するかなど、幅広い分野で政策を考えなければならないということも明らかになった。

 一方で、国際的には、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、エボラ出血熱などの経験があったにもかかわらず、日本には感染拡大を想定した準備はできていなかった。これは政府だけではなく、国民一般も関心を持っていなかった。このため、自民党の感染症対策ガバナンス小委員会で、流行長期化を見据えて、政府の体制を抜本的に見直すよう求める提言をまとめた。

指揮命令系統の明確化

 感染症が有事ならば、国から地方の末端にいたるまでの指揮命令系統を明確にしなければならない。しかし実際には、例えば現場で調査や情報収集をする保健所は都道府県、政令指定都市、特別区に所管が分かれている。そこで、国が政令市や特別区にある保健所の情報を都道府県知事に集めるよう指示を出しても、普段やっていないことはなかなかうまくいかない。

 いくら首相がPCR検査を1日2万件実施せよ、と言っても、なかなか実現しない。一貫した政策決定と実行ができない。これが我が国の感染症対策の実態だ。現在の体制を根本的に変えなければならない。

専門的な実務レベルの司令塔を新設

 重要なのは司令塔機能の確立だ。今は、政策を企画・立案し決断を下す機能と、感染状況の分析など専門的な知見を必要とする実務レベルの対応がきちんと分けられておらず、混乱の原因になっている。

 そこで、基礎・臨床・疫学的事項を担当する健康危機管理機構を新たに設置し、技術的な司令塔と、内閣官房や厚生労働省などの政策意思決定の司令塔を分離すべきだと考えている。

 米国の疾病対策センター(CDC)などが知られているが、CDCでは臨床研究との連携不足が指摘されている。このため健康危機管理機構は基礎的な疫学調査と臨床研究を一体的に行い、治療法や医薬品の開発も迅速に行える組織とすべきだ。

なくならないファクスでの情報収集

 行政のIT化が著しく遅れていることも明らかになった。…

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武見敬三

自民党国際保健戦略特別委員長

1951年生まれ。テレビキャスターなどを経て、95年参院初当選。外務政務次官、副厚生労働相、党参院政審会長などを歴任。世界保健機関(WHO)親善大使。参院東京、当選5回。自民党麻生派