Nizi Projectから日韓関係を考察する

田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
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田中均氏=根岸基弘撮影
田中均氏=根岸基弘撮影

 『Nizi Project』(虹プロジェクト)をご存じだろうか。シンガー・ソングライターでもあり韓国有数のプロダクションを主宰するプロデューサーのJ.Y.Park氏が日本のガールズグループを養成するプロジェクトだ。

 日本国内各地のオーディションから選抜された26人を東京に呼び集め、合宿オーディションを行い、合格した13人が韓国で6カ月かけて歌、ダンスを中心に研さんを重ね、最終的に9人が本年12月にデビューするという。グループ名を『NiziU』(ニジュー)という。

 私はYouTubeで選抜の過程を記録したドキュメンタリーの一部始終を見た。日本と韓国との関係に長い間携わってきた私にはとても興味深かった。

Nizi Projectに見る日韓の共通項と違い

 ドキュメンタリーを見て、日韓の近さと違い双方の大きさを改めて思い知った。JYP Entertainmentの育成方法には欧米にはなかなか存在しないような精神主義的なアプローチが根強く、それは日韓共通の文化だと思う。Park氏が意味深い言葉をかけ各人を鼓舞し、集団としてより高いレベルに向かわせるアプローチは日本的ですらあると思う。

 半面、最終的には徹底的な競争と完全さを求める姿には韓国社会の特性を感じる。韓国国内市場は小さすぎることから広く海外に活躍の場を見いだすため、グローバルな市場に通用する高い個の技能鍛錬が必要となる。

 これに比べ日本はそれなりに市場も大きく、おそらく日本のアイドルグループには歌手やダンサーとしての完全性を求めるよりも、むしろ不完全なものをファンが愛し皆で育てていく集団としての側面が強いように感じる。

 このような日韓の特性を併せ持って育成されてきたNiziUは、今後日韓両国だけではなく世界を目指して活動する計画だという。きっと、日本人は日本に欠けている個の高い能力を見、韓国人は韓国に欠けている集団としての調和を見るのだろう。それは韓国でJ-POPや日本のアニメがもてはやされ、日本でK-POPや韓流ドラマが愛されるゆえんであるのではないだろうか。

翻って映し出される日韓関係の悪循環

 翻って日韓の政府関係にはNiziUで感じるような日韓が相補う姿は見えないことが悲しい。…

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田中均

日本総合研究所国際戦略研究所理事長

1947年生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官、在サンフランシスコ日本国総領事、経済局長、アジア大洋州局長を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、05年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、10年10月に(株)日本総合研究所国際戦略研究所理事長に就任。06年4月より18年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、19年)、『日本外交の挑戦』(角川新書、15年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、09年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、09年)など。2021年3月よりTwitter開始(@TanakaDiplomat)、毎日リアルタイムで発信中。