ふらっと東アジア

米大統領選を見つめる中国の自信と不安

米村耕一・中国総局長
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中国・上海で開かれた中国国際輸入博覧会のオープニングセレモニーで演説する習近平国家主席のテレビ映像=2020年11月4日、AP
中国・上海で開かれた中国国際輸入博覧会のオープニングセレモニーで演説する習近平国家主席のテレビ映像=2020年11月4日、AP

 11月3日に投開票された米大統領選について中国メディアは、ややはしゃいでいた。中国共産党機関紙・人民日報の公式ツイッターアカウント(英語)はトランプ大統領の劣勢が伝えられた日本時間の8日、トランプ氏による「おれが勝った、大差で」というツイートに、「HaHa」という言葉と爆笑する絵文字をつけてリツイートした。その後、公式アカウントはそのツイートを消している。

 また、中国紙・環球時報は10日付の社説で「トランプ大統領は結局のところ新型コロナウイウルスによって(選挙に)負けたのだ」と指摘した。さらに対中脅威論をあおり、中国への圧迫を強めたが、トランプ氏にとっても、米国にとっても、本当の敵は、新型コロナなど内部の問題であって、中国ではなかったと主張した。

 バイデン政権になっても米中対立の構図は変わらないというのが、中国でも専門家らのおおむね一致した見方だ。しかし、それでも「予測不能で、極端な発言が多く、やたらと中国たたきに奔走したトランプ氏よりはバイデン氏のほうがまし」という感情は、中国メディアの報道から、にじみ出ている。

 一方、選挙の前も後も落ち着かない米国の状況をよそに、中国の習近平国家主席は、着々と自らの長期政権への布石を打っているようだ。10月12日には中国共産党内での自らの立場を高める工作条例を公表し、11月3日には今後5年間のみならず2035年までの中長期の発展計画の概要を公表した。連日、テレビに登場する習氏の姿は自信と余裕にあふれている。

 中国の政治学者は「習氏はコロナ発生初期に大きな不安を抱えたが、今では国内でコロナの制御に成功し、自信を深めている。特に中米が対立する中、米国の混乱に比べ中国は経済も回復基調で非常にうまくいっているとの思いは国民の中にも強い。習氏にとっては結果的にトランプ氏に大きく助けられた1年だった」と分析する。

習氏による習氏のための条例

 10月中旬に公表した工作条例とは、中国共産党指導部の統治方法について具体的に記したものだ。

 その第3条には「二つの擁護」というキーワードが含まれている。二つの擁護とは①党総書記である習近平氏の党の核心としての地位を擁護する②党中央の権威と統一的指導を擁護する――のことだ。

 さらに、習氏を含め7人いる中国共産党の最高指導部、政治局常務委員の中で、会議の議題の決定権を総書記が持つなど、習氏が明確に優越することを示す文言も盛り込んだ。

 中国政治に詳しい静岡県立大学の諏訪一幸教授は「これで名実共に断トツになった。党規約に書かれているものの、すでに形骸化している集団的指導体制を完全に否定したものだ」と解説する。2022年に予定される党大会で、今回の工作条例で示された内容に沿って党規約が修正される可能性もあるという。中国共産党の研究部門にいたベテラン党員も「集団指導体制は、誰もが間違いをおかすという前提で、誤りを修正するために作られたものだ。それをなし崩しにするのは党にとっても良いことではない」と不安を口にした。

 諏訪…

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米村耕一

中国総局長

1998年入社。政治部、中国総局(北京)、ソウル支局長、外信部副部長などを経て、2020年6月から中国総局長。著書に「北朝鮮・絶対秘密文書 体制を脅かす『悪党』たち」。