株価バブルは崩壊間近

森永卓郎・経済アナリスト、独協大学教授
  • 文字
  • 印刷
森永卓郎氏=藤井太郎撮影
森永卓郎氏=藤井太郎撮影

 日経平均株価が連日高値を更新し、11月12日には、バブル崩壊後の最高値となる2万5520円に達した。ニューヨークダウも2万9479ドルと、史上最高値に肉迫するところまで株高が進んでいる。

 株価は経済を映す鏡だと考えれば、この株価は明らかに異常だ。

 景気全体を表すとされる日本の「景気動向指数」は、この数カ月、ゆるやかに改善しつつあるとはいえ、9月の一致指数は80.8と、1年前の99.7と比較して大幅に下がっている。

 もちろん、株価は過去の経済を映し出すのではなく、半年ほど先の未来を映し出すものだ。しかし、景気の先行きもきわめて厳しいと私は考えている。ひとつの理由は、バイデン大統領の誕生だ。9月に終了した2020会計年度で、米国は330兆円もの財政赤字を出した。トランプ大統領が派手なバラマキをやったからだ。これに対し、バイデン氏は、財政引き締めにかかるだろう。バラマキを抑制し、公約した富裕層への増税にも踏み切るとみられる。緊縮財政は確実に景気の足を引っ張るから、少なくとも短期的には米国経済は低迷することになる。

 そこにのしかかるのが、新型コロナウイルス感染の拡大だ。欧州各国では、連日過去最多の新規感染者数が報告されているが、米国も11月13日の感染者数が15万人を超え、過去最多となっている。

 日本も同じだ。欧米と比べたら、少ないのは事実だが、11月12日の新規感染者数は1660人と、その時点での過去最多を記録している。それにもかかわらず、政府はGoToキャンペーンを継続しようとしているのだから、今後爆発的感染拡大に結び付いていくのは、確実だろう。

 新規感染者が過去最多を記録したその日に、日経平均株価が最高値をつけているのだから、どう考えてもおかしな現象だ。

 私は、株式市場が、いま完全なバブルを引き起こしているのだと考えている。投資家は、経済動向や企業業績を無視している。彼らが買い進める理由はたったひとつ、「買えばもうかる」からだ。しかし、株価が企業業績と乖離(かいり)して上がり続けることはできない。これまで世界では、70回を超える大きなバブルが発生しているが、ひとつの例外もなく、バブルは崩壊しているのだ。

 もちろん、いまの株価は、米国のファイザー社が開発した新型コロナワクチンが、世界を救うことになることを織り込んでいるのだという見方もある。最も楽観的な展望では、日本でも来年春にはワクチンが行き渡り、日本経済がV字回復するという。

 しかし、私はそんなことは起こりえないと考えている。まず、ファイザー社のワクチンが日本人にどれだけの有効性があるのかが分かっていない。また、ワクチンの持続力にも疑問がある。すでにファイザー社のワクチンは、2回投与して初めて効果を持つことが分かっているから、有効期間が長くないのは確実だ。そのなかで、新型コロナウイルスは、変異を繰り返しているから、変異後のウイルスに有効性を保てるかどうかも分からない。さらに、ファイザー社のワクチンは、マイナス70度以下でしか、運搬・保存ができないとされているから、それが短期間で普及するとみるのは、どう考えても無理がある。

この記事は有料記事です。

残り2864文字(全文4173文字)

森永卓郎

経済アナリスト、独協大学教授

1957年生まれ。日本専売公社、経済企画庁、三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)などを経て独協大経済学部教授。専門はマクロ経済、計量経済、労働経済。コメンテーターとしてテレビ番組に多数出演。著書に「年収300万円時代を生き抜く経済学」(光文社)など。