
都市伝説を楽しむテレビのバラエティー番組で「世界を操る秘密結社」などと紹介されるフリーメーソン。小説や映画では陰謀論も渦巻き、都市伝説を語る際にフリーメーソンは定番中の定番になっているが、実態はどうなのか。
ドイツの特派員として2011~15年に赴任していたベルリンでは、よく知人から「先週、フリーメーソン(ドイツ語でフライマウラー)の会員という人物に会ったよ」と聞かされた。この街にはどうもフリーメーソンがたくさんいるらしい。だが私はなかなか個人的に知り合う機会に恵まれなかったため、思い切ってベルリンにあるグランドロッジ(地域の集会所を統括する組織)に取材を申し込んだことがある。
すると快く応じてくれた。14年秋のことだ。
今回のコラムではドイツのフリーメーソン幹部への取材記録、そしてフリーメーソンと並んでよく言及されるドイツの秘密結社イルミナティについて紹介したい。なお、厳密にはフリーメーソンとは各個人会員のことを指しており、団体名としてはフリーメーソンリーが正しいが、ここでは便宜上、フリーメーソンと呼ぼうと思う。
国際政治に影響を及ぼしているのか?
ベルリン南西部にある重厚なレンガ造りの邸宅を訪れた。ここがベルリンのロッジ(集会所)を束ねるグランドロッジで、グランドマスター(責任者)を務めるアヒム・シュトラスナー博士がにこやかに出迎えてくれた。白いあごひげを生やし、眼鏡をかけた大柄な紳士で、普段はドイツ北部キールで医師をしている。
フリーメーソンとはどんな団体なのか。特定の政治勢力と結び付き、世界征服を企んでいるのではないか。そんなぶしつけな質問にも「よく聞かれます」と嫌な顔一つせず、よく通る声で答える。
「まず政治的な活…
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篠田航一
ロンドン支局長
1997年入社。甲府支局、東京社会部、ベルリン特派員、青森支局次長、カイロ特派員などを経て現職。著書に「ナチスの財宝」(講談社現代新書)、「ヒトラーとUFO~謎と都市伝説の国ドイツ」(平凡社新書)、「盗まれたエジプト文明~ナイル5000年の墓泥棒」(文春新書)。共著に「独仏『原発』二つの選択」(筑摩選書)。