不妊治療助成は「所得、回数に関係なく40万」を 保険適用後も助成は必要

伊佐進一・衆院議員
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伊佐進一氏=須藤孝撮影
伊佐進一氏=須藤孝撮影

 公明党は1998年に党の基本政策大綱に盛り込んで以来、20年以上にわたって不妊治療支援に取り組んできた。最初は現場の小さな声からはじまった。ある看護師が浜四津敏子参院議員(当時)に経済的、心理的な負担など不妊治療を受ける方々の声を届け、我々も大事な問題と受け止めて、助成拡大と保険適用を訴えてきた。そして公明党の坂口力厚生労働相(当時)のもとで初めて公的助成が実現し、一歩、また一歩と支援を拡大、20年を経て、一国の首相の目玉政策となるまでになった。いよいよ保険適用に向けて、20年以上にわたる議論の蓄積を踏まえ、菅義偉首相に提言を行った。

治療の質確保が極めて重要

 今回、保険適用をめぐる菅首相の発言に対して、多くの方が喜ぶと同時に、保険適用によって治療の幅が狭まるのではないか、医療の質が落ちるのではないかという不安の声が寄せられた。例えば、現在の治療で使われている機器や薬剤などは、薬事承認されていないものがかなりある。薬事承認がされないまま保険適用になるとそれらが除外されてしまうので、かえって質が落ちる可能性がある。

 薬事承認ができるものについては急ぐと同時に、早期に承認できないのであれば、先進医療制度を適用する、あるいは助成制度を一部残す必要がある。治療の質を確保するためには、こうした保険適用、先進医療、助成制度を組み合わせた「ハイブリッド方式」とすることが必要となる。

実態に合わせれば40万円の助成が必要

 現行の助成制度は初回30万円まで、その後は1回15万円まで、凍結胚移植は7.5万円の支援がおこなわれている。しかし、この支援額は実態に合っていない。我々は、保険適用が実現するまでは、回数に関係なく40万円までに上限をひきあげるべきだと提言した。

 40万円という額は、保険適用された場合と同じぐらいの負担感になるように算出したものだ。厚労省は体外受精が約37万円、顕微授精が43万円などの費用を示しているが、これは新鮮胚を使った場合で、実態に比べてやや過小評価になっている。

 実際には多くの人が凍結胚を使うので保存費用などが別途かかり、新鮮胚治療よりも高額となる。実際にそれぞれの治療にあたる患者数で加重平均をすれば、不妊治療の平均費用は50万円を上回る。

 この50万円の治療が保険適用された場合、窓口負担は3割なので15万円の計算となるが、高額療養費制度によって、実際の負担は8万円程度におさえられる。50万円の治療費で自己負担を8万円とするためには、保険適用がない段階では助成金が40万円必要になる。

 また、現在の制度では2回目以降の助成額が半分の15万円になるが、これは予算上の制約によるものであって、医学上の合理的な理由はない。よって何回目であっても助成額は同額とした。

 すでに凍結して保存している受精卵を体内に戻すだけの凍結胚移植については治療費用は平均15万円だ。現行では7.5万円の助成額となっているが、これも保険適用を考えると十分ではない。保険適用後、15万円の3割負担であれば、窓口ではらうのは4万5000円でなければならない。よってその差額となる10万5000円の支援が必要であり、凍結胚移植の助成は7.5万円から10万円に引き上げることが求められる。

 もしこれらの助成額から下回り、その規模で保険適用がなされるならば、それは現在、皆さんが受けている治療よりも範囲が狭まるということであり、質の低下につながる可能性があるということだ。

 不妊治療が保険適用されれば、当然、所得制限は撤廃されるべきであって、助成拡大の時点からその考えを貫くべきだ。

 また、今我々が推し進める政策の大きな方向性は、多様なライフスタイルに合わせた支援を行っていくということであり、近年の税制改正などでも繰り返しその点が強調されている。子どもを作りたいというカップルを応援するなか、結婚しているかどうかで差をつけるべきではないと考えている。事実婚についても助成の対象にすべきだ。

透明性を保険適用の条件に

 不妊治療は自由診療であるため、現状では医療機関によって質のばらつきがある。成功率も施設によって大きな開きがあるのが現状だ。しかし、治療を受けている当事者には、情報が不十分なために適切な選択ができない。医療機関を選ぶ際には、口コミや会社との距離などで選ばざるを得ないとの声も多い。治療の質を確保するために、保険を適用する施設については、成功率や、手術回数などのデータを公開するなど、透明性を課すべきだ。また適切に選択できるようにするため、治療のメニューや治療方針などについても情報公開が必要だ。

求められる心のケア

 不妊治療の当事者の声を聞いていて切実なのは経済的負担だけではない。心理的な負担へのケアも重要な支援となる。周囲に打ち明けるのも大変だが、打ち明けたとしても「まだ生まれないのか」といったプレッシャーがあったり、不妊治療を中止する時に「なぜやめるのか」と言われたりしたという例は多い。出産につながらないことで、努力を否定され、人格を否定されたかのように感じたという当事者は多い。また、「生まれるべき赤ちゃんを失った」という喪失感も覚えるという声もいただいた。

 全国の都道府県には不妊専門相談センターがあるが、取り組みに濃淡があり、国が全体として底上げをし、心のケアも含めた相談体制を強化していく必要がある。その際には、当事者による相談としてピアカウンセリングも重要な取り組みとなる…

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伊佐進一

衆院議員

1974年生まれ。文部科学省職員を経て、2012年衆院選初当選。公明党厚生労働部会長。衆院大阪6区、当選3回。