
米国では景気が悪化した時の大統領が2期目を目指す選挙で大敗することはよくあることだ。新型コロナウイルスによる死者が25万人を超えるような状況で、もちろん雇用も悪い。本来ならばバイデン氏はもっと圧勝してもよかったはずだ。上院議員選挙も下院議員選挙も民主党が席巻するとの見方もあったが、実際にはそうならなかったことも考えると、「トランプ氏だから」というよりも「民主党がそれほど伸びなかった」と判断すべきではないか。
やはり、民主党の多国間主義の主張に対して根強い反対があった。米国社会が予想以上に内向きになってきていることが裏付けられた結果でもあったと思う。
だからバイデン氏になったから米国がもろ手を挙げて多国間主義、国際協調主義に戻ってくるかというと、そう簡単ではない。もちろんバイデン氏が公約した気候変動対策のパリ協定には復帰するだろう。しかし、昔のように米国が国際社会のあらゆる分野で主導権をとるような時代には戻らないのではないか。
米国内でシェールオイルが産出されるようになったことで、自国でエネルギーがまかなえるようになりつつある。エネルギーと食料が自国でほぼまかなえるならば、なぜ外に出て行かなければならないのか、ということになりかねない。この点は非常に危惧している。
米議会の動きが重要に
これからは議会の役割がより重要になってくる可能性が高い。トランプ政権では行政機関の役職が空席のことも多かった。このため議会が物事を進めるという意識が強くなっている。そして、議会には世界貿易機関(WTO)などの国際機関に米国の影響力を行使しようという意思がある。
バイデン氏は上院議員も副大統領も経験している。共和党のマコーネル上院院内総務とも話ができる。だから議会にも根回ししながら、超党派で進めていくという手法をとるのではないか。
米国の大統領が代わると、ホワイトハウスが変わり、政策も大きく変わると思われがちだ。もちろんパリ協定などを含めて大きく変わるものはあるだろう。…
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薗浦健太郎
衆院議員
1972年生まれ。読売新聞記者、衆院議員秘書などを経て2005年衆院初当選。外務政務官、副外相、首相補佐官、自民党総裁外交特別補佐などを歴任。自民党副幹事長。衆院千葉5区、当選4回。自民党麻生派。