潮流・深層

米国務省報告書に漂う「米中新冷戦」の気配

古本陽荘・北米総局長
  • 文字
  • 印刷
対中政策について説明する米国務省のバーコビッツ政策企画室長(右)=11月30日、米ハドソン研究所のホームページから
対中政策について説明する米国務省のバーコビッツ政策企画室長(右)=11月30日、米ハドソン研究所のホームページから

 11月の米大統領選でトランプ大統領の再選は阻まれた。過去の米大統領の多くは2期8年務めており、第二次世界大戦後で再選できなかった現職大統領はフォード、カーター、父ブッシュの3氏のみだ。共和党のトランプ氏の支持率はほぼ一貫して不支持率を下回っており、信任投票の色合いが濃くなるなかで、民主党のバイデン前副大統領に敗れた。政治的分断を助長するような発言や、民主的価値観を重んじているのか疑わしい言動が相次ぎ、トランプ氏に厳しい評価が下されたということだろう。

 ただ、ワシントンの外交や安全保障に関する有識者の間では、民主党の人も含めて、トランプ政権の対中政策については評価する声が多い。評価していなくても、対中政策を抜本的に見直した姿勢については、あまり批判の声を聞かない。トランプ政権は、2017年に発表した国家安全保障戦略と18年の国家防衛戦略で、中国とロシアの2カ国との長期的な競争の時代に突入したとの認識を示した。そして、20年夏に政府高官4人が相次いで対中演説を行い、中国が世界中で引き起こす問題について、中国共産党による支配がその要因であるという主張を繰り返した。そのクライマックスが、ポンペオ国務長官が7月23日に行った西部カリフォルニア州のニクソン大統領図書館での演説だった。

 そして、大統領選の結果を巡る混乱が続く中、国務省がウェブサイトに中国に関する報告書をアップロードした。74ページの報告書のタイトルは「中国問題の要因」(The Elements of the China Challenge)。執筆したのは、国務長官直属である国務省政策企画室のスタッフだ。

 内容は、ポンペオ氏の7月の対中演説に沿ったものだ。中国の覇権的な行動は、中国共産党の世界観に根ざしており、指導者が代わってもその姿勢は一貫している。その認識に立ち、米国は中国に対する基本的な姿勢を確認すべきだと提言。第二次世界大戦後に米国が主導して築き上げた自由で開かれた、法の支配に基づく国際秩序の強化、同盟関係の再評価、中国に関する国民への教育の必要性や中国専門家の育成の必要性などを求めて…

この記事は有料記事です。

残り1406文字(全文2294文字)

古本陽荘

北米総局長

1969年生まれ。97年毎日新聞入社。横浜支局、政治部、外信部を経て2018年12月から北米総局長(ワシントン)