
「私は最初の女性副大統領かもしれませんが、最後ではありません」――。11月の米大統領選後、バイデン氏とともに勝利演説に臨んだカマラ・ハリス次期副大統領(56)のスピーチに胸を打たれた人は少なくない。誰だって夢見たものになれるチャンスがある。未来を担う子供たちにそう思わせるパワーがあった。1歳の娘を育てる私も、要職に就く女性のいる世界で娘が成長するのだと思うと胸が高鳴った。
一方で、ハリス氏は自身より前の時代を生きた女性たちへの称賛も忘れなかった。かつて、女性の参政権を求めて活動した女性たちのシンボルカラーの一つである真っ白なスーツに身を包み、「彼女たちの肩の上に、私は立っているのです」と笑顔を見せた。
2020年は米国で女性の参政権が認められてちょうど100周年に当たる。ハリス氏が副大統領に就任するに至るまで、さまざまな分野で女性たちがぶつかってきた「ガラスの天井」を破り、道を切り開いた「彼女たち」とは。その一人として、20世紀半ばに黒人女性で初めて副大統領候補になったシャーロッタ・バスの人生に触れてみたい。
「勝とうが負けようが、問題提起においては勝利する」
ハリス氏は8月、民主党全国大会のスピーチで「彼女たち」の名前を次々に挙げた。
黒人女性で初めて学位を取得した女性の一人で公民権運動活動家、メアリー・チャーチ・テレル▽初の黒人向け大学を開設したメアリー・マクロード・ベスーン▽公民権運動の中心となったファニー・ルー・ヘイマーとダイアン・ナッシュ氏▽黒人女性初の連邦裁判官、コンスタンス・ベイカー・モトリー▽黒人女性初の下院議員、シャーリー・チザム――。なお、ナッシュ氏を除く先人たちは皆、鬼籍に入っている。
ハリス氏は、元検察官で米国史上2人目の黒人女性上院議員だ。法曹界や政界で活躍したモトリーとチザムは、ハリス氏にとってとりわけ大きな意味を持つのだろう。
しかし、ハリス氏が言及しなかった黒人女性で、米国の歴史家たちが忘れてはいけないと指摘する人物がいる。黒人女性として初めて副大統領候補となったシャーロッタ・バス…
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