2020年の世界と日本--コロナ、ポピュリズム、統治体制の劣化

田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長
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田中均氏=根岸基弘撮影
田中均氏=根岸基弘撮影

 2020年は、世界が国境を閉ざし、国内に目を向け続けた年だった。新型コロナパンデミックは世界で6600万人に達するという感染者と150万人を超える死者を出している。中国を含めアジアは比較的には感染者・死者とも少ないが、それでも日本では感染者は15万人を超え、第3波のまっただ中にあるように見受けられる。

米国社会の「分断」と「頑固な保守主義者」

 新型コロナパンデミックとともに多くの先進民主主義国で見られたのは、ポピュリズム勢力の台頭と統治能力の劣化だ。米大統領選では、大方の予想通りバイデン前副大統領が勝利したが、トランプ大統領は7400万を超える票を獲得し、接戦州でもバイデン候補に肉薄した。トランプ大統領の新型コロナウイルス対策軽視、法と秩序を重視する発言により人種差別問題に無関心ととられたこと、経済の落ち込み、民主党有利と伝えられた郵便投票、民主党支持の傾向が強い若い世代の投票率の上昇、そしてトランプ大統領の虚偽に満ちていると評されるSNSなど、いずれをとってもトランプ大統領に不利な要因ばかりであったにもかかわらず、トランプ大統領は共和党候補として近年最大の票を獲得した。大統領選挙だけではなく議会選挙でも共和党は踏ん張った。そこにはトランプ大統領が勝利した16年選挙から一貫して50%近い有権者層に「頑固な保守主義」が浸透しており、…

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田中均

日本総合研究所国際戦略研究所理事長

1947年生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官、在サンフランシスコ日本国総領事、経済局長、アジア大洋州局長を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、05年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、10年10月に(株)日本総合研究所国際戦略研究所理事長に就任。06年4月より18年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、19年)、『日本外交の挑戦』(角川新書、15年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、09年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、09年)など。2021年3月よりTwitter開始(@TanakaDiplomat)、毎日リアルタイムで発信中。