ウェストエンドから

ブレグジットは始まり? 英国の「主権」「憲法」問題のゆくえ

服部正法・欧州総局長
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英国とEUの自由貿易協定(FTA)交渉を巡りトップ会談に臨むジョンソン英首相(左)とフォンデアライエン欧州委員長=ブリュッセルで2020年12月9日、AP
英国とEUの自由貿易協定(FTA)交渉を巡りトップ会談に臨むジョンソン英首相(左)とフォンデアライエン欧州委員長=ブリュッセルで2020年12月9日、AP

 ブレグジット(英国の欧州連合=EU=からの離脱)の「移行期間」終了が今月31日に迫る中、英国とEUの間ではいまだに自由貿易協定(FTA)が締結できていない。交渉は難航しており、決裂して「協定なし」となる危険性をはらむ。「協定なし」となれば、英EU間で新年から関税が発生して経済が混乱する恐れがある。

 最後の難関となっている交渉分野は、主に英国側が主権の確保や行使などの観点から難色を示しているものだ。そもそも多くの英国民をブレグジットへと後押ししたのは「EUから主権を回復したい」という思いだった。だから「主権が取り戻せない」と映る妥協はできない――離脱強硬派にはそんな思いが強い。英国側のこだわりを多面的に見ていくと、英国の持つ独特の「主権」観や、その主権を核とした英国の政体が転換期にあるという現状などが浮かび上がってきた。

妥結できない英EU自由貿易協定

 「英国は自らの漁業水域で主権行使ができない世界でたった一つの国になるべきだと、彼ら(EU)は言う。そんなことはこの国のいかなる首相も受け入れないだろう」。ジョンソン英首相は9日、英下院でこう述べ、EUの交渉姿勢を批判した。

 12月に入り、ジョンソン氏とフォンデアライエン欧州委員長の「トップ協議」を重ねても妥結に至らない交渉は、決裂の可能性がある。ジョンソン氏の言葉は、英国側の観点からのEUへの不満がどういったものかを端的に表現している。

 現在の交渉で折り…

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服部正法

欧州総局長

1970年生まれ。99年、毎日新聞入社。奈良支局、大阪社会部、大津支局などを経て、2012年4月~16年3月、ヨハネスブルク支局長、アフリカ特派員として49カ国を担当する。19年4月から現職。著書に「ジハード大陸:テロ最前線のアフリカを行く」(白水社)。