続クトゥーゾフの窓から

天を見上げる仕草とは 憎しみに駆られた旧ソ連諸国の紛争

大前仁・外信部副部長
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ロシアとの戦闘で近親者を亡くし、墓前で悲しむ人々=トビリシで2009年8月、大前仁撮影
ロシアとの戦闘で近親者を亡くし、墓前で悲しむ人々=トビリシで2009年8月、大前仁撮影

 強権的な傾向が残る旧ソ連の国々を取材していると、不思議な仕草に遭遇する。「この問題の責任は誰にあるのか」と質問したときに、多くの人が天を見上げるのだ。この仕草の意味合いを解きながら、2020年秋に旧ソ連圏で起きたナゴルノカラバフ紛争について考えたい。

 私は3月まで計7年間、モスクワに駐在し、旧ソ連の国々を取材して回った。08年にはジョージア(グルジア)でロシア軍との武力衝突(通称グルジア紛争)が起こり、一部地域が一時的に占領される事態となった。私は翌09年、現地に赴いた。

 ジョージアの軍人墓地では遺族が泣き崩れ、集合住宅には爆撃の跡が残るなど、紛争から1年が過ぎても傷痕は生々しかった。この時取材した男性の一人に「誰に責任があると思う」と尋ねると、くだんの天を見上げるジェスチャーをした。天は「お上」や「権力」を指している。つまり、権力を持っている人間に責任がある、ということを意味しているのだ。…

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大前仁

外信部副部長

1969年生まれ。2008~13年、18~20年にモスクワ支局勤務。現在は旧ソ連諸国や米国の情勢、日露関係を担当。