危機管理の基本忘れ「攻め込まれた」日本のコロナ対策

小川和久・静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト
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小川和久氏=北山夏帆撮影
小川和久氏=北山夏帆撮影

 政府は1月7日、首都圏の1都3県に緊急事態を発令した。1カ月にわたり飲食店などの営業時間短縮、夜間の外出などの自粛が要請される。13日には緊急事態宣言の対象地域に新たに大阪、愛知、福岡など7府県を加えた。しかし、これで新型コロナウイルス感染症の拡大を防止できるのか、その先に経済を回復できるのか、はなはだ疑問と言わざるを得ない。武力侵攻なら攻め込まれてしまった状態だ。

 まず、日本のコロナ対策は危機管理の基本に立っていない。言うまでもなく、危機管理の要諦は拙速にある。必要なことを適切なタイミングで実行できなければ国家国民を守れない。時間との勝負でもある。なんとしても達成すべき目標に邁進(まいしん)する。かりに法制度を逸脱した疑いがあれば、問題を速やかに健全化する。それが成熟した民主主義国家である。

 安全保障の立場からいえば、新型コロナウイルスは武力侵攻以上の深刻な脅威である。通常の武力侵攻では、一般市民が攻撃の対象になることは基本的にはない。市民を標的にすることは国際法で禁じられているし、国際的イメージから、どの国も避けようとする。

 しかし、ウイルスは全人類の隣にいて、いつ牙をむくかもしれない。ウイルスの正体と後遺症の出方が解明され、ワクチンが普及するまでは、普通のインフルエンザより死者が少ないなどと単純な比較をせず、最大の脅威として扱う必要がある。

 最初から対策を感染症の専門家に丸投げしたのも、日本政府に危機管理の思想が存在しない証拠と言える。新型コロナウイルスは未知の部分が多く、疫学的解析だけでは、感染のピークがいつで、発症していない感染者数が何人なのか把握するすべもない。ロ…

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小川和久

静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト

 1945年生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。小渕内閣ではドクター・ヘリ実現に中心的役割を果たした。電力、電話、金融など重要インフラ産業のセキュリティ(コンピュータ・ネットワーク)でもコンサルタントとして活動。2012年4月から、静岡県立大学特任教授として静岡県の危機管理体制の改善に取り組んでいる。『フテンマ戦記基地返還が迷走した本当の理由』『日米同盟のリアリズム』など著書多数。