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実際の死者数は5倍? ロシアの新型コロナ感染の実態とは

前谷宏・モスクワ支局長
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防護服を着て新型コロナウイルスの犠牲者を埋葬する作業員ら=ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで2020年12月15日、AP
防護服を着て新型コロナウイルスの犠牲者を埋葬する作業員ら=ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで2020年12月15日、AP

 ロシアの新型コロナウイルスの感染者数は2020年12月下旬に300万人を突破し、今も1日2万人台のペースで増えている。だが、感染者数に対する死者数の割合は20年春の流行開始時から他の国々よりも低く、露政府の公表する統計の正確性を疑問視する声は絶えない。プーチン政権は統計操作を否定し、「感染状況はコントロールされている」と強調するが、一部の専門家からは死者数は公式発表の5倍近くに上るとの指摘が出ている。事実なら、新型コロナによる死者数世界トップの米国に次ぐ多さとなる。新型コロナの感染拡大が続く中、ロシアで何が起こっているのか。露政府が公表する統計のからくりを読み解きながら、プーチン政権の感染対策について改めて考えていきたい。

新型コロナ担当副首相の突然の「告白」

 「(20年)1~11月の国内の総死者数は前年同期に比べ13.8%増加した。この増加分の81%以上は新型コロナウイルスかその感染の後遺症に関連する」

 露政府で新型コロナ対策を担当するゴリコワ副首相は20年12月28日の記者会見で、この日に発表された11月時点の人口動態統計について問われ、そう答えた。露メディアのニュースで内容を知った私は、いきなりの「告白」に驚きを感じた。露政府の対策本部が連日公表する新型コロナの死者数は、11月末時点で3万9895人だった。これに対し、露連邦統計庁が公表する人口動態では20年1~11月のロシア国内の総死者数は前年同期より22万9732人も増大していた。この増加分の「81%」は単純計算で18万6082人に当たる。ゴリコワ氏の発言通りなら、ロシアの実際のコロナ関連死者は公式発表の約4.7倍に達するということになる。

 だが、後に露政府のホームページに掲載された会見録を読むと、「81%」の具体的な根拠は示されていない。ゴリコワ氏は会見から2日後の国営ニュース放送のインタビューで「新型コロナウイルスが直接の死因となった人は11月末時点で7万921人、新型コロナに感染していたが死因がコロナ以外の人は4万5109人」(計11万6030人)という別の死者数も示している。一方…

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前谷宏

モスクワ支局長

2004年入社。新潟支局、東京社会部、福岡報道部を経て、20年9月にモスクワ支局へ着任。ロシアや旧ソ連諸国の動静を追いかけている。過去には警視庁や福岡県警、防衛省などを担当した。