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医療従事者の重い負担 医療崩壊防ぐ支援を

冨岡勉・衆院議員
冨岡勉氏=須藤孝撮影
冨岡勉氏=須藤孝撮影

 医師の経験、知識を生かし、自民党の新型コロナウイルス対策医療系議員団本部の本部長を務めている。国会議員であると同時に、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、理学療法士など国家資格を持つ専門家が参加している。2020年3月初旬にスタートし、これまで35回の研究会を行った。各種学会長、製薬・医療機器メーカーなどからヒアリングを行ってきた。政府や専門家会議と党の間をつなぐことが我々の役割だ。

「もう限界」

 コロナによる医療体制の逼迫(ひっぱく)は、実感としては東京をはじめとする3大都市圏はパンク状態、日本医師会の先生たちの言葉を借りれば「もう限界」だと言える。病床数のような数字からは見えない部分がある。一般の人の目には入りにくい部分に相当、エネルギーの負荷がかかっている。

 たとえば防護服の着用一つとっても、勤務時間の前後、あるいは休憩をとるごとに医療用帽子、マスク、手術衣、すべて着替えなければならない。汗もかくし、時間もかかるし、その上なんとしても自分が感染してはならないと思い、非常に神経を使う。通常ならば3日も耐えられないようなことが、毎日続く。

 人手の部分でも、勤務日程が組めない事態が危惧されている。救急患者は昼夜問わずやってくるので、過重労働に陥ってしまう。人工心肺装置の「ECMO(エクモ)」がよく知られるようになったが、これをつけるとそれだけで必要な人手は倍にはねあがる。重症者数の増加は現場の人手不足に直結する。医療従事者が持たなくなれば医療は破綻する。手厚い支援体制が必要だ。

 また感染拡大の状況は地域によってかなりバラツキが出ている。私の地元の長崎では指揮系統を一本化している。通常の医療体制では重症者が周囲の病院から集まる中核病院に負担がかかってしまう。作戦会議場の地図上のランプではないが、全体を見渡して空いているところに素早く患者さんを搬送するシステムが必要だ。自衛隊からの医師や看護師の派遣は行われているが、全国各地の自衛隊病院を専門病棟として活用する工夫も必要だ。

 ロックダウンなどの厳しい措置をとれば感染拡大防止には有効だが、経済に深刻な影響が出ることが危惧される。経済状況の悪化に伴う自殺者の増加も起きる可能性がある。放任すれば経済は回復するかもしれないが、感染は拡大する。

 政治は常にこの相反する政策のバランスをいかにとるかを迫られている。重症化を防ぎ、医療崩壊を防ぐことで経済活動を止めないようにするしかない。今回の緊急事態宣言の発令は遅きに失した感は否めないが、1都3県に限定せず、大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、栃木、福岡の7府県を追加し、計11都府県に対象を広げた。現時点では第1回目の緊急事態宣言を解除した際のような急激な感染レベルの低下は見られず、さらなる延長をする必要がある。

短時間検査の導入を

 検査体制の充実も必要だ。PCR検査は時間がかかることが問題だ。より簡易で短時間で終わる「LAMP法」などをドライブスルー方式や専門外来病棟などで導入し、検査数を増やし、無症状の若年感染者の発見に全力をあげて取り組むべきだ。検査時間が短ければ再検査も容易だ。東京オリンピック・パラリンピックでも活用できる。体操の内村航平選手の場合は、2日後に3カ所で別々に行ったPCR検査で陰性となり、大会に参加できるようになった。仮に選手が偽陽性だった場合でも、再検査や再々検査に時間がかかると試合に参加できない場合も出てくる。短時間で結果が出る検査法を用いて早く再検査できれば、影響を最小限にできる可能性がある。

空気の除菌と「ゾーニング」に関する法改正

 手洗いをしたり、机の上を消毒したりはしているが「空気」の除菌については何もしていないのが現状だ。無症状感染者が大声を出したり、せきやくしゃみをしたりして、エアロゾル化した飛沫(ひまつ)粒子が部屋のなかに蔓延(まんえん)する。「オゾン」「紫外線」「高機能(HEPA)フィルター」。主にこの三つを使って、汚染された空気の対策もしなければならない。

 これまで現代都市のウイルス等感染症に対する対策は非常に脆弱(ぜいじゃく)で、無関心、手を抜いてきたと言わざるを得ない。例えば高層マンションビルの地下飲食店街でクラスターが発生した場合、以後その地下街に客は行くことを敬遠する。場合によっては地下街全体の除菌を考える必要が出てくる。

 さらに言えば、ビル所有者にとって通路やエレベーター設備などの共用部分の感染症対策の管理をしっかりしておかなければ、テナント入居者やマンション購入者の賛意を得られなくなる時代が来ている。これからビルを建設しようとする者は、一定の安全基準・感染症対策基準を考慮せざるを得なくなる。将来的には所有者に感染症に関する安全管理義務を求める法律の制定を視野に活動を続ける。

 この考え方は病院にもあてはまる。現在の病院では発熱や咳嗽(がいそう)患者も一般の腰痛患者も、同じ待合室で待たされる。まるで感染を起こしなさいと言わんばかりの構造的欠陥があるにもかかわらず、これまで放置されてきた。医療機関において病因別の区画の確保(ゾーニング)を行うべきことも明らかになった。

 大きな病院ならいざ知らず、民間のクリニックなどで今すぐゾーニングを行うのは不可能に近い。しかしながら、安全なまちづくりを進めていく上でも、まず医療機関の安全性確保の仕組みが必要だ。ゾーニングの概念の導入をはかるべきであり、今後医療系議員団本部としてルール作りを行っていきたい。

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衆院議員

 1948年生まれ。長崎県議を経て、2005年衆院初当選。副文部科学相兼副内閣相、衆院文部科学委員長、衆院厚生労働委員長などを歴任。医学博士。自民党新型コロナウイルス対策医療系議員団本部長。党内閣第一部会長。衆院比例九州、当選4回。