菅首相は国家観を明らかにすべきだ

藤井裕久・元財務相
藤井裕久氏=藤井太郎撮影
藤井裕久氏=藤井太郎撮影

 安倍晋三前首相は国家観、歴史観が非常に間違った人だった。政治的に言わねばならなかったのだろうとは思うが、菅義偉首相が安倍政権を引き継ぐと言って政権に就いたことは非常に残念だった。

 現在の菅政権は必ずしも安倍政権をそのまま引き継いでいるとは言えないようだ。しかし、日本学術会議の問題では本音が出た。この点では安倍政権を引き継いだ。安倍政権から引き続き務めている杉田和博内閣官房副長官の名前も出ている。任命拒否された加藤陽子東京大学教授は私が主宰する勉強会にもたびたび来ていただいた。加藤さんは共謀罪には反対だ。結局はそうした人を排除する安倍政権の考え方を引き継いでいる。

 また、突然、政権に就いたことは否定できない。だから、当たり障りのないところからやろうとしているように見える。はんこをどうするとか、あるいは携帯電話料金を下げるとか、それはいいが、本当は国家観をもっと見せてほしい。「私は安倍さんとは違う、国民が主体の国家であって国家が主体の国家ではない」ということから始めるべきだった。

 やはり一国のリーダーならば国家観を持たなければならない。いろいろな方に聞くと「菅首相には国家観などない」と言う人もいるがそんなはずはない。…

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元財務相

1932年生まれ。大蔵省を経て77年参院初当選。90年衆院初当選。細川内閣と羽田内閣で蔵相、鳩山内閣で財務相を務めた。参院当選2回、衆院当選7回。2012年に政界を引退した。