ミャンマー軍政が中国の「属国」にならない理由

渡辺康太・元外交官
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アウンサンスーチー氏の肖像画を掲げ、ミャンマー国軍によるクーデターに抗議する人たち=大阪市中央区の大阪城公園で2021年2月7日、久保玲撮影
アウンサンスーチー氏の肖像画を掲げ、ミャンマー国軍によるクーデターに抗議する人たち=大阪市中央区の大阪城公園で2021年2月7日、久保玲撮影

 私は2010年に外務省入省後、ミャンマーを専門とし、ヤンゴン外国語大学に留学後の13年からヤンゴンの日本大使館に勤務した。16年に帰国後も本省でミャンマーを担当し、昨年退職するまで同国との間の首脳、外相会談の通訳を多く担当した。

 2月1日のクーデターを主導したミンアウンフライン国軍最高司令官については、ミャンマーで民主化が進展する中でも国軍の政治的役割の重要性をたびたび強調し、国家統治全般に対する強い関心を示していたのが印象に残っている。

 現在はロンドン大でミャンマーの辺境地域における民兵隊と国家形成の関係性を研究しているが、自身の経験も踏まえ、クーデターや日本を含めた国際社会の果たすべき役割について、考えを書いてみたい。

中国の影響力は拡大

 今回のクーデターを巡り、中国の役割が一部で注目を集めている。1月にミャンマーを訪問した中国の王毅国務委員兼外相が、ミンアウンフライン国軍最高司令官と会談していたことから、クーデターへの中国の関与を疑う声すらある。

 確かにミャンマーの旧軍事政権は、1988年9月のクーデター以降、国際社会で孤立する一方、中国との間で蜜月関係を築いた。民主化が進展する中でも、国軍は武器調達の大半を中国に依存してきた。

 その一方で、国軍は国境付近の少数民族武装勢力に影響力を行使する中国に対し、強い警戒感を持って接してきた。88年以前には、中国共産党から物的、人的支援を受けたビルマ共産党との激しい戦闘を国軍は経験している。そのような因縁のある中国に対し、クーデターの情報を事前に漏らすとは想像し難い。

 今回のクーデター後、中国がミャンマー国軍を非難する態度を見せないのは、内政不干渉を原則とする従来の立場に沿っており、目新しいものではない。

 国連安全保障理事会は4日、ミャンマー情勢について報道声明を出し「深い懸念」を表明したが、今後同様の決議が提出されれば、中国は強く反発するだろう。拒否権を持つ常任理事国の中国がミャンマー国軍を擁護し続ける限り、国連が実効性のある措置を取ることはほぼ不可能である。中国によるミャンマーへの影響力拡大は避けられない。

国軍は過度の対中依存は望んでいない

 では、軍政下のミャンマーはこのまま中国の属国になってしまうのか。

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渡辺康太

元外交官

 1988年生まれ。外務省入省後、ミャンマー語専門職員として、在ミャンマー大使館、南東アジア第一課に勤務。2020年退職。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院博士課程在籍。