Social Good Opinion

「想い出を纏う」お洋服で、世界に想いを馳せる瞬間を。

鎌田悠菜・株式会社WOOB 「shiro ni sekai」代表
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鎌田悠菜さん=筆者提供
鎌田悠菜さん=筆者提供

 Z世代が「ポジティブな社会をつくるためのオピニオン」を発信する「Social Good Opinion」。

 今回は、世界に引かれる私が、世界各地の文化(伝統衣装・素材)と想(おも)い出を軸にお洋服を創(つく)る想いをつづっていきます。

伝統衣装で着飾ることは文化を身に纏うこと

 私は祖母の影響で幼少期から伝統的な日本文化に触れる機会が多く、特に着物に関しては、「伝統衣装は文化そのものであり、伝統衣装で着飾ることは文化を身に纏(まと)うことである」と教えられました。思えば私が身に纏うもの、お洋服に引かれるようになったきっかけはこの頃に感じた特別な感じだったように思います。

 そしてその伝統衣装への憧れが、世界各地の文化を纏いたいという想いにつながるきっかけをくれたのは、祖父でした。幼い私に世界各地の写真を見せながら、「いつか自分の目で見てきなさい」と言われたことを今も鮮明に覚えています。この2人がくれた視点が、私が今世界各地の伝統素材でお洋服を創っている基盤となっています。

世界各地の伝統素材=小島剛史撮影
世界各地の伝統素材=小島剛史撮影

 伝統衣装は特別な時に纏う衣装ではなく、もともとは気候や風土、暮らしによってその地域の人々の生活に適したお洋服としてつくられました。伝統衣装の形状や模様、素材には、気候風土ばかりか民族の歩んだ歴史、暮らしぶりや思想など、文化を表しています。そしてその衣装は人の手によってつくられてきました

 日本では「お洋服を仕立てる」ことはなじみのないことかもしれないが、私は50カ国でのバックパッカー旅行の中で「お洋服を仕立てる」文化を何度も目にしました。布生地と欲しいお洋服の型を選び、縫製の職人さんにつくってもらうという、人の手でお洋服が仕立てられていく様子を日常生活の中で見ることができます。

ネパールの縫製職人Ritaさん=Devendra Adhikari撮影
ネパールの縫製職人Ritaさん=Devendra Adhikari撮影

 私はその「お店にお洋服を買いに行く」のではなく「お洋服を作りに行く」という文化に心を打たれました。

その人が着ることで初めて価値が生まれるお洋服

 私は、現在セミオーダーのリメークブランド「shiro ni sekai」を立ち上げ、「想い出を纏う」をコンセプトに、世界各地の伝統素材を白の中にさりげなく取り入れてお洋服を創っています。shiro ni sekaiでは、世界のどこかに想い入れの地がある方へ、日常の中でその地での想い出を身に纏い、その地や人々に想いを馳(は)せる瞬間をつくるお洋服を創っています。

shiro ni sekai商品の一部=小島剛史撮影
shiro ni sekai商品の一部=小島剛史撮影

 こんな経験はありませんか?

 旅行や留学、お仕事などさまざまな理由で海外へ渡航した際に、タイパンツやサリー、アロハシャツなどのその地特有の布ものやお洋服、伝統衣装を購入したが、帰国後は使う機会がなくて何年もクローゼットの奥底に眠っている。

 私たちはその想い出の詰まった海外の素材を、白をベースにさりげなく取り入れ、普段使いできるようなお洋服にしています。そして製作において余った素材をshiro ni sekaiにお裾分けする仕組みを導入することで、海外の素材がない方でも、想い入れのある地の特有の素材でお洋服を創ることができます。

想い出タグ=吉田竜大撮影
想い出タグ=吉田竜大撮影

 shiro ni sekaiは「想い出」をとても大切にしています。「想い出」とは、唯一無二で尊い記憶や感情です。着ることを通してその地での記憶や感情を蘇(よみがえ)らせたい、そんな願いから「想い出」に特化したこのブランドが生まれました。

 いくつもあるこだわりの中でも「想い出タグ」の製作はshiro ni sekaiの大きな特徴です。「想い出タグ」とは、お洋服を創る際に、一人一人に想い出のヒアリングを行い、それを文章にまとめたタグです。shiro ni sekaiのお洋服は、その人がお洋服を着て、世界や「想い出」に想いを馳せて初めて、価値が生まれると考えています。

お洋服を創ることと目をそらすことのできない課題

 地球環境や労働環境に配慮したエシカルファッションへの注目が高まる中、私たちにできることは何かを何度も自分自身に問いかけました。深刻な構造的課題を抱えるファッション業界、お洋服を創ることそのものが悪なのかと不安に駆られる中で、私が背中を押された記事があります。<斎藤幸平の分岐点ニッポン 資本主義の先へ どうすればエコ?ファッションを考える「捨てない」道の可能性>。ファッション産業による環境負荷とリサイクルの裏側にある真の課題を指摘し、エシカルファッションのヒントを探るこの記事では、普遍的価値を持つお洋服の生産と「捨てない」可能性について書かれています。

 この中で紹介されている“最新のテクノロジーや機械を使わなくても、解決できることがある。それは手間をかけるということだったりする。”という言葉。

 想い出をお洋服に織り込むことで、そのお洋服に特別な価値を持たせる。

 ビジネスモデルとしてはコストも手間もかかると指摘されてきましたが、一人一人その人にとって大切な記憶や感情をお洋服に詰め込むことで、そのお洋服が特別なものになり、少しでも長く使えるように大切に扱ってもらえるかもしれない。

 この記事を読んで改めて、私はこの「想い出」とお洋服を繋げることに可能性を感じました。

 もどかしいほど遠回りでも、時間がかかるとしても、この手間によって少しでも社会にインパクトを与えられるように、これからも「想い出を纏う」お洋服を創っていきます。

鎌田悠菜

株式会社WOOB 「shiro ni sekai」代表

 1997年、青森県弘前市生まれ。国際教養大学4年。途上国開発の最前線の活動を学ぶために、6年間フィリピンの貧困地域を定期的に訪れ、現地NGOのもとで活動。大学入学後は、貧困地域に暮らす女性を対象にスタイリングイベントを実施。2020年6月に株式会社WOOBを設立し、現在は50カ国を旅した経験を活かして、世界各地の伝統素材でお洋服をつくる「shirio ni sekai」を運営すると共に、196カ国で196着のお洋服を創る「196fuku ni sekai」プロジェクトを進めている。