オリエンタルラジオにみるミレニアル世代の価値観

横江公美・東洋大学国際学部教授
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横江公美氏=吉田航太撮影
横江公美氏=吉田航太撮影

 「でんでんデデンのデン武勇伝」のネタで2005年に鮮烈なデビューを飾り、その後もブレークを繰り返すオリエンタルラジオが、吉本興業から独立するニュースが年末に駆け抜けた。

 そろって独立するコンビ愛の強さにも、記者がいない会見にも驚いた。ファンと関係者に知らせることが目的であれば、動画配信で事足りる。オリエンタルラジオは記者をファンに置き換えて会見を行った。前編後編で約1時間の動画は、約400万人が視聴し、ニュースにもなった。

 すでに華やかな成功と転がるような挫折を味わいその度に立ち上がってきたオリエンタルラジオだが、実は、これから花開くミレニアル世代(1980年から2000年ごろに生まれた世代)だ。世代論で見ると、今から、彼らの時代であるミレニアルの時代が本格化する。

 米国ではミレニアル世代が支持したオバマ大統領が誕生した08年からミレニアル時代が始まったとされる。トランプ大統領はミレニアル時代の流れに敗れ、ミレニアル世代の守護神となるバイデン大統領が登場した。

 一方、日本では11年以降、ミレニアル世代という言葉は認識されるようにはなったが、どちらかというと否定的な視点で見られてきた。オリエンタルラジオへの評価はミレニアル世代に対する世の中の評価でもあった。高度成長期とバブル期の世代が中心の時代にあって、オリエンタルラジオは孤軍奮闘するしかなかった。新しさへの熱狂と同時に、早過ぎる成功への嫉妬と異質なものへの排除がオリエンタルラジオに向けられた。

ミレニアル世代の特徴を凝縮したオリラジの笑い

 オリエンタルラジオの笑いは、ミレニアル世代の特徴そのままだ。今までの伝統的なお笑いとは一線を画している。

 まず、相方を褒める。デビューと同時に一世を風靡(ふうび)した「武勇伝」は、今までのツッコミとボケの概念を変えた。それまでは、ボケに対してツッコミは「ボケ」「ばか」と言った否定的な言葉を使うだけでなく頭をたたくなどして笑いをとっていた。伝説のやすしきよしの漫才では、メガネが飛ぶほどのどつきがあった。

 それに対し、オリエンタルラジオの場合は、ツッコミの藤森慎吾さんは「あっちゃん、かっこいい」と相方の中田敦彦さんを褒めたたえて笑いをとる。

 さらに2人は、お笑いにリズムとダンスもつけた。漫才にリズム芸というジャンルを創設した。14年に発表した「PERFECT HUMAN」では、お笑いと歌、ダンスの垣根を取り払い融合させた。紅白歌合戦の出場まで決めるが、最初に披露した際には、これはお笑い芸ではないと摩擦が起きたことも知られている。プロフェッショナルなダンスグループがダンスをし、藤森さんの歌唱力のラップで、御神体「ナカタ」を奉る。コンビによる漫才という絵柄ではなく、場面は壮大なコンサート会場に様変わりする。

 ミレニアル世代は、今までのどの世代よりも親に可愛がられて育ったために、前向きで格差や差別を許せず多様性を重んじる。まさにオリエンタルラジオの芸風だ。また、中田さんは子育ての時間を取るために吉本の舞台に出演しなくなった、という。彼らが生まれたころに流行した「芸のためなら女房も泣かす」の「浪花恋しぐれ」の正反対だ。

 ミレニアル世代は、SNSの使いこなし方にも独特の特徴がある。それは助けあうことだ。ミレニアル世代のシンボル、FACEBOOKの創設者のマーク・ザッカーバーグは、ミレニアル世代の使命を、自分だけがやりがいを見つけるのではなく、やりがいを持てない人にやりがいを持つことを手伝うことだと語っている。

 最近、オリエンタルラジオの2人が力を入れているのは、まさにこのことだ。中田さんは、中田YouTube大学というチャンネルを作り、300万人を超えるフォロワーを持つ。再生数が100万を超える動画も多々ある。ユーチューバーとしては芸人のトップを走る。

 一方、藤森さんは、テレビを大事にしつつも、中田さんを追ってユーチューブの世界に参入している。俳優、ミュージカルスター、声優、テレビのバラエティーをこなすハイブリッド芸能人としての立ち位置である。藤森さんはデジタルでは中田さんに出遅れるが、仲間との助け合いに力を発揮する。藤森さんが作った「君、可愛いね」と褒めたたえるキャラであるチャラ男は、周りの人を幸せにすることを使命とするチアリーダーだ。

 今回の独立は、藤森さんが中田さ…

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横江公美

東洋大学国際学部教授

 1965年生まれ。VOTEジャパン(株)社長、米国のシンクタンク「ヘリテージ財団」上級研究員を経て、17年より現職。著書に「隠れトランプのアメリカ」「日本にオバマは生まれるか」「アメリカのシンクタンク」など。