
2月19日夜、今年の議長国イギリスの呼びかけで主要7カ国(G7)首脳テレビ会議が開かれ、首脳声明が発表された。昨年は新型コロナ感染の影響でG7首脳は対面の会合がなかった。テレビ会議形式での開催は昨年4月以来だが、今次会合をいかに評価すべきか。本邦主要紙社説は、温度差こそあれ、中国への厳しい対応を求める点で一致している。しかし、発表された首脳声明を読む限り、G7首脳それぞれの対中国姿勢はよく見えてこない。
同声明は、その中国について「全ての人々にとり公正互恵的な世界経済システムを支持するために、他の諸国、特に中国のような大きな経済を含む主要20カ国・地域(G20)諸国を関与していく。G7の首脳として、非市場志向の政策や慣行に対処するための共同のアプローチについて協議し、全ての国に影響を与える重要な世界的な課題に取り組むため、他国と協力していく」としか述べていない。この点につき主要紙の社説はかなり手厳しい。
日本経済新聞は、「G7が結束し国際協調体制を立て直せ」とする社説の中で、「真価が問われるのは中国への対応だ。不公正な国家資本主義の是正を求めたが、南シナ海の軍事拠点化や香港の抑圧、ウイグル族の弾圧などには触れなかった。……G7も米国と歩調を合わせ、中国の異質な行動をただす圧力を加え続けるべきだ」と書いた。
さらに、産経新聞は「G7と菅首相 中国に『モノ言う』実践を」と題する「主張」の中で、「覇権を追求する中国にどう対峙(たいじ)するかは、その試金石である。……6月に英国で開かれる対面会議(サミット)では経済にとどまらず、他の問題でも議論を尽くし、厳しく指弾する文書を出すべきだ。」とより批判的に論じている。
ウーン、確かにおっしゃる通りなのだが、G7首脳会議で作られる宣言・声明の類いには独特の作成プロセスがある。今回は筆者の知る範囲でこの種の文書の作成過程を説明しながら、今回の首脳声明の意義について考えたい。…
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キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
1953年生まれ。外務省日米安全保障条約課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを経て2005年に退職。立命館大客員教授、外交政策研究所代表なども務める。近著に「AI時代の新・地政学」。フェイスブック「Tokyo Trilogy」で発信も。