総務官僚接待問題で考える不透明な「許認可」行政

田中秀明・明治大学公共政策大学院教授
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田中秀明氏=宮武祐希撮影
田中秀明氏=宮武祐希撮影

 2月24日、総務省の局長らが放送事業者から繰り返し接待を受けていたことから、国家公務員倫理規程違反により処分された。接待する側に菅義偉首相の長男がいたことから、国会やメディアで問題がクローズアップされている。菅首相の影響力や責任に関心が集まっているが、問題の本質は放送・通信に関する規制のガバナンスにある。

接待の構図

 最初に今般の経緯を整理する。報道(「毎日新聞」(2021年2月23日)など)によると、2006年9月菅義偉氏が総務相に就任し、長男が総務相秘書官に登用、08年長男は秘書官を辞めて東北新社に入社した。同社は16年から5年間で計39回、総務省幹部を飲食で接待した。この中には、総務省を退官して、内閣広報官となった山田真貴子氏(3月1日に辞職)も含まれている。

 接待が行われた期間において、17年1月総務省が東北新社をBS4K放送事業者に認定、18年4月総務省がCSの「囲碁・将棋チャンネル」(東北新社の子会社が運営)をハイビジョン未対応で唯一衛星基幹放送事業として認定、20年3月総務省が東北新社子会社「スター・チャンネル」の放送事項の変更を許可、など放送事業を巡る許認可が行われている。

 また、東北新社が加盟する衛星放送協会が衛星利用料金などの低減を要望していたことも判明している。衛星放送は、近年、インターネットの動画配信サービスに押されて利用者が伸び悩んでいたことが背景として挙げられる。

 こうした動きで浮かび上がるのは、規制を課す省庁と規制を受ける業界の間にある典型的な構図である。放送業の許認可や利用料金の設定は事業者にとって死活問題であり、関連する情報の入手などのため、接待を行うことに意味がある。

 「毎日新聞」(2021年2月25日)は、「24日に処分を受けた総務省の11人は、通信や放送行政の中枢を担う旧郵政省出身の幹部ばかりだ」、「減給3カ月の処分を受けた谷脇康彦氏は総務省事務方ナンバー2の総務審議官で、次期事務次官の呼び声も高い。放送行政に直接携わった経歴は浅いが、特に携帯電話などの通信分野に強く、携帯料金値下げのキーマンとして菅首相の信頼も厚い。情報流通行政局長として放送行政の責任者だった秋本芳徳氏は、一連のNHK改革も主導した」と報じている。

官僚接待の理由

 官僚の接待問題は、注目を集めたものだけでも、旧大蔵省(1998年)、防衛省(2007年)、文部科学省(2018年)、そして総務省と同時期に判明した農水省などがあり、繰り返されている。1999年には、国家公務員倫理法が制定されている。具体的には、利害関係者からの接待や金品贈与が禁止され、割り勘でも1人1万円超の飲食は事前届が必要になるなど、厳しいルールが導入された。導入最初は、大学の同級生でも、利害のある会社に勤めていると、一緒に飲むことができなかった。

 にもかかわらず、である。筆者が旧大蔵省に入省した80年代は(そしてその前も)、官民だけではなく官官などの接待は日常であり、一晩に二つも三つもの宴席を掛け持ちしている人が少なからずいて、接待の回数が官僚の実力の指標にもなっていた。…

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田中秀明

明治大学公共政策大学院教授

 1960年生まれ。85年大蔵省(現財務省)入省。オーストラリア国立大学客員研究員、一橋大学経済研究所准教授、内閣府参事官などを経て、2012年より現職。専門は財政・ガバナンス論。著書に「官僚たちの冬 霞が関復活の処方箋」など。