潮流・深層

「トランプ党」に未来はあるか

古本陽荘・北米総局長
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保守系の団体が集まるCPACで退任後初の演説をするトランプ氏=米南部フロリダ州オーランドで2021年2月28日、AP
保守系の団体が集まるCPACで退任後初の演説をするトランプ氏=米南部フロリダ州オーランドで2021年2月28日、AP

 米連邦議会に今年1月6日、トランプ大統領(当時)の支持者らが乱入した事件の後、与党だった共和党は「分裂するのではないか」と指摘された。事件当日は、共和党議員らも議場から避難することを強いられた。「被害者になった」という意識も働き、トランプ氏に厳しい視線が共和党の議員からも注がれた。

 だが、この事件で暴力を扇動した疑いでトランプ氏の弾劾裁判の動きが民主党によって本格化すると、こうした共和党議員の批判の声はトーンダウンした。選挙区の有権者の声を聞く限り、依然としてトランプ氏への支持は根強く、トランプ氏に反旗を翻すのは得策ではないと判断したようだ。下院での弾劾訴追の決議に賛成票を投じた共和党議員は10人。上院での弾劾裁判で、有罪との判断を示した共和党議員は7人にとどまった。

 弾劾裁判での無罪の評決を受け、退任後に初めて公の場に姿を示したトランプ氏が2月28日に南部フロリダ州オーランドで演説した。選んだ場はCPAC(シーパック、Conservative Political Action Conference)と呼ばれる保守系の団体が集まる年次総会だ。本来は、共和党の有力議員や知事らが一堂に会するが、従来はワシントン郊外だった会場がオーランドに移されたことや、議会で新型コロナウイルス対策法案の審議が行われていたことから規模は小さめで、主役のトランプ氏が注目を独占した。「CPACではなくTPAC」と呼んだ方がふさわしいとの声も上がった。

 トランプ氏の演説内容は、昨年の大統領選の延長線上で、新鮮味はさほどなかった。大統領選の結果を争う姿勢を改めて示し、「ガッツがない」と選挙結果に関する訴えを退けた連邦最高裁を批判。不法移民を締め出す政策が必要だと訴え、バイデン政権がすべてを覆しているとかみついた。そして、2024年大統領選に関し、「3度目の勝利のために出馬を決断するかもしれない」と述べ、再出馬の可能性をほのめかし、会場は大歓声に包まれた。もちろん、「3度目」というのは、「昨年大統領選は実際には勝ったが、勝利を盗まれた」という前提に立っている。

 登壇した議員らも「ドナルド・トランプはどこにもいかない」(テッド・クルーズ上院議員)などと、相次いでトランプ氏を持ち上げる演説を行い、共和党が「トランプ党」であることを改めて印象づけた。

 ただ、会場の聴衆を対象に行われ、トランプ氏の演説の直前に公表された「ストローポール」と言われる人気投票のような調査では意外な結果が出た。97%が「トランプ氏の業績を評価する」と回答し、95%が「トランプ氏の政策課題を共和党は引き続き継続すべきだ」と答えたのは想定内。…

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古本陽荘

北米総局長

1969年生まれ。97年毎日新聞入社。横浜支局、政治部、外信部を経て2018年12月から北米総局長(ワシントン)