Social Good Opinion

ショーツから、声なき女性の違和感をカタチに

江連千佳・I _ for ME 代表
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江連千佳さん= Cocoro Haraguchi撮影
江連千佳さん= Cocoro Haraguchi撮影

半数の女性が悩むショーツの締め付け感

 「実は……、わたし、夫の下着をよく借りているんですよ」

 「言いにくいですけど、ショーツ、家では、はいてないんです」

 半年前、ショーツについてヒアリングをしたとき、予想以上に多くの女性がショーツを避けていることに衝撃を受けました。300人の女性にアンケートを取ったところ、半数の女性が「ショーツが体に合っていない」と答えたのです。ずっとショーツの締め付け感や食い込みを不快に思っていた私は、「ショーツをつけるのがつらかったのは、私だけじゃなかった」と、とても安心したのを覚えています。しかし、下着メーカーの店頭に並ぶショーツの形は、デリケートゾーンや足の付け根に密着するカタチばかり。解決策がなかったのです。

 だったら、自分で作ろう。

 私は、これ1枚ではける部屋着型ショーツ、”おかえり”ショーツを開発し、クラウドファンディングでの資金調達を経て、2021年3月8日の国際女性デーからショーツの販売を開始しました。

“おかえり”ショーツ = Kanako Yamaguchi 撮影
“おかえり”ショーツ = Kanako Yamaguchi 撮影

 半数もの女性が感じていたショーツの違和感。なぜ誰も解決策をうみだしてこなかったのでしょうか。冒頭の女性たちの発言を思い出してみてください。「実は……」「言いにくいですけど……」彼女たちがショーツに感じていた違和感は、「言いにくいこと」であり、私が聞くまで「声」になっていなかったのです。自分の最もデリケートな部分に触れているショーツだからこそ、自分にあったものを身につけることは重要です。しかし、女性のカラダについて知ること、話すことへのタブー感や、女性のショーツはこういうものだ、という固定的なイメージは、声を抑圧し、選択肢を狭めていたのです。だからこそ私は、全ての女性が”わたし”思いな選択をできるようになる日まで、タブーやイメージによって押し殺された「声なき違和感」を「カタチ」にすることで社会に問題提起をし続けます。

商品開発中の様子=筆者提供
商品開発中の様子=筆者提供

取り戻せ、遠のくジェンダー平等

 「女性が活躍する社会へ」

 私たちは、この言葉を何度も聞いて、その言葉に希望を持って育ちました。しかし、毎年12月にはGender Gap Index(ジェンダーギャップ指数)で先進国最低レベルのジェンダーギャップがある国に生きていることを突きつけられます。”わたし”思いな選択をする前に、選択肢がない。そんな国で、結婚し、子どもを産み、育て、家事をし、そしてキャリアを築くことを求められているのです。

 「女性活躍」という理想を掲げても、政治レベルでの取り組みは実感も実態も伴っていないのが現実です。<「女性活躍」まだ遠く 管理職を3割、政府目標延期 支援伴わず、負担感>https://mainichi.jp/articles/20200906/ddm/041/010/058000c。さらに、日本人女性の意識調査では「持続可能な開発目標(SDGs)」の全項目の中で、ジェンダーへの関心度は10位と低くなっています(Source: Kanter, 2020, Lux Social Damage Care Campaign Evaluation) 。この結果は、いつまでも進まない女性活躍政策への諦めにも見えます。

 当事者からも、遠のいていく「ジェンダー平等」の問題。私たちの世代がすべきことは、この問題を自分たちの手に取り戻すことではないでしょうか。

日常から、社会は変えられる

 私たちは、経済の発展のためにキャリアを築きたいわけではありません。少子化を解決するために子どもを産みたいわけではありません。「私たち」と女性ひとくくりにしても、その中にはそれぞれの幸せが存在します。つまり、私たちは自分の幸せのためにキャリアを築くことや、子どもを産むという「選択」をすることもある、ということです。

 インターネット上のムーブメント「#わきまえない女」や、選択的夫婦別姓など、今に至るまで女性たちは政治に対して「声」を上げ続け、選択肢を求めてきました。生理の貧困問題が話題になるなど、少しずつ社会は動いていることを感じるニュースも増えています。一方で、「ジェンダー平等は政治の話」「難しい」「関係ないと思う」といった無関心層もいることを忘れてはいけません。そういった層にとっての気づきの入り口が今、この社会にはないのです。だからこそ私は、ショーツをはじめとした日常に溶け込む「カタチ」としてジェンダーの問題をデザインすることで、入り口を作り出していきます。日常から、小さな気づきから、”わたし”から、社会は変えられると信じて。

江連千佳

I _ for ME 代表

 2000年東京都生まれ。津田塾大学総合政策学部在学。17歳でニュージーランドに留学。現地高校の性教育に衝撃を受ける。18歳のころ、子宮内膜症・腺筋症がわかって以来、女性のヘルスケアの話題がタブー視されていることに問題意識を持つ。その後、女性のカラダに関する悩みを解決すべく、部屋着型ショーツの“おかえり“ショーツ開発を決意。「女性の声なき違和感をカタチにする」をミッションに掲げ、I _ for ME(アイフォーミー)を立ち上げた。