中国海警法 備えつつ「敵意」下げる正攻法で

小川和久・静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト
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小川和久氏=北山夏帆撮影
小川和久氏=北山夏帆撮影

 海警法(中華人民共和国海警法)の施行に伴い、世界的に中国に対する警戒感が強まっている。

 海警法は武装警察部隊に所属する海警部隊の組織と活動を規定する法律。「管轄区域」という拡大解釈可能な適用範囲を記述するなど、国際法を逸脱する内容が問題視されている。

 一例を挙げれば、第47条の武器使用がある。「外国船舶が我が国の管轄下にある海域に侵入して不法に生産活動に従事し、停船命令に従うことを拒否し、またはその他の方法で乗船、検査を受けることを拒絶し、その他の措置を用いても違法行為を止めるのに十分ではない場合」などに武器使用が可能としており、尖閣諸島周辺での海警局の船舶による日本漁船の追尾などに適用されることへの警戒感も生まれている。

 これに対して中国の王毅国務委員(副首相級)兼外相は全国人民代表大会(全人代=国会)を受けた3月7日の記者会見で「特定の国を対象にしたものではなく国際法にも合致している」と強調した。

 しかし、海警法は武器を使用してよい理由と場所を列挙する一方、武器使用の限界を明示していない。これは国際法で認められた外国軍艦や政府公船の権利(主権免除)を無視しており、国連憲章の武力不行使原則や国連海洋法条約に反している。

 また、中国が主張する南シナ海の九段線など「管轄海域」の多くは国連海洋法条約に違反しており、その海域で外国船に対する管轄を主張することは不法である。

 外国軍艦と公船について、海警法違反を理由に「強制退去、強制えい航」すること、「国家主権、主権的権利及び管轄権」の侵害を理由に武器を使用することもまた、国連海洋法条約に違反している。

 日本政府にも問題がある。昨年12月の政治プレミアへの寄稿<なぜ日本は領海法を改正しないのか>で述べた領海法の改正問題に象徴されるように、毅然(きぜん)たる姿勢を示していないからだ。

 例えば、海警法の施行に当り、条文が国際法に違反していることを指摘しなかった。危害射撃が可能との政府見解を示すにあたっても、海警法のように法執行とし…

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小川和久

静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト

 1945年生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。小渕内閣ではドクター・ヘリ実現に中心的役割を果たした。電力、電話、金融など重要インフラ産業のセキュリティ(コンピュータ・ネットワーク)でもコンサルタントとして活動。2012年4月から、静岡県立大学特任教授として静岡県の危機管理体制の改善に取り組んでいる。『フテンマ戦記基地返還が迷走した本当の理由』『日米同盟のリアリズム』など著書多数。