クレムリンのシグナルの読み方

佐藤優・作家・元外務省主任分析官
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佐藤優氏=久保玲撮影
佐藤優氏=久保玲撮影

 クレムリン(ロシア大統領府)が、日本の報道機関のロシア報道に関して苦言を呈している。3月4日、ロシア政府が事実上運営するウェブサイト「スプートニク」(日本語版)が3日の発言についてこう報じた。

 <ロシアのペスコフ大統領報道官は、ロシアで政権が交代した場合に同国が日本にクリル諸島を譲渡する可能性があると報じるマスコミの記事を読まないようアドバイスした。

 ペスコフ氏は記者団に「このようなマスコミ(の記事)を読まないでください。日本を含むすべての国に非常に多くの極端論者、そのような極端な思考を持つ人々を支持する非常に多くの人たち、そしてこのような極端な思考を二国間関係の発展に向けた建設的なアプローチに置き換えようとしている人々が非常にたくさんいる」と述べた。

 ペスコフ氏は、ロシアと日本のコンタクトはその豊かさの点で抜きんでていると指摘し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が収束してすべての人が普通の生活に戻ったときにこの動きが継続されることに期待を表明した。

 ペスコフ氏は「われわれは日本との関係を大切にしており、大統領はこれについて繰り返し話してきた。われわれは日本との関係を発展させ、二国間関係の最も困難なすべての問題を対話で解決する」と語った>(https://jp.sputniknews.com/politics/202103048201262/)

 ここで興味深いのはペスコフ氏が日本の政府とマスメディアを区別していることだ。ロシアと米国、英国、ドイツの関係が急速に悪化している状況で、ロシアは日本に対する非難を差し控えている。それは首相官邸がクレムリンとの直接のチャンネルを持ち日本外務省もロシア外務省と緊密な連絡を取り、日露両国の見解の違いを整理するとともに、協力できるところでは関係を発展させていくという実務的信頼関係の構築に成功しているからだ。

 菅義偉首相の指導で北村滋国家安全保障局長と秋葉剛男外務事務次官が優れた実務能力を発揮している。日本のマスメディアにはこの現実が見えていないようだ。

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佐藤優

作家・元外務省主任分析官

 1960年生まれ。同志社大大学院博士前期課程修了。神学修士。外務省入省後、モスクワの日本大使館に勤務。著書に「自壊する帝国」「私のマルクス」など。