
緊急事態延長は意味があったのか
政府は、3月5日に決めた首都圏1都3県に対する2週間の緊急事態宣言を再度延長しない方針だ。病床の使用率が減少していることが理由だという。菅義偉首相は17日、緊急事態宣言を「21日に解除する方向」と述べた。
しかし、東京都の新規陽性者数は3月15日現在、7日連続して前週比プラスとなっている。感染の下げ止まりどころか、リバウンドの様相を呈しているのだ。緊急事態宣言の2週間の再延長は、果たして意味があったのだろうか。
実は、2週間の再延長を決める際、すでに多くの感染症の専門家が、単純な延長は意味がないと批判していた。自粛に頼る抑制策は長続きしないからだ。実際に、首都圏の人出は、緊急事態宣言延長下でも増え続けた。
夜間の飲食店利用制限を中心とする抑制策が一定の成果を収めたのは事実だが、それだけでは感染収束に持ち込めないことが分かったというのが、今回の緊急事態宣言の成果だったのだ。
このまま緊急事態宣言を解除すれば、感染第2波と第3波の轍(てつ)を踏む形で、感染第4波につながっていくだろう。ゼロに近いところまで抑え込まないと、新型コロナ感染はすぐに息を吹き返してしまうからだ。
自粛と緩和を繰り返していくしか方法がないと言う人もいる。しかし、私はコロナ抑制のために少なくとも二つの方法があると考えている。
PCR検査の徹底を
一つの方法は、東京23区で徹底的なPCR検査を実施することだ。これまでの一年間、日本はPCR検査数が伸びなかった。しかし、政府は少しずつ方針を転換し始めている。クラスターが頻発する高齢者施設では3月中に従事者全員の検査を完了する予定だ。
菅義偉首相は、大都市でも無症状者に対する無料のモニタリング検査を実施する方針を明らかにした。しかしその検査規模は1日1万件程度を目標にするという。そんな規模では、とても無症状の感染者をあぶり出せない。
もっと大きな問題は、無症状者へのPCR検査は、緊急事態宣言が出されている地域で実施されないことだ。モニタリング検査は緊急事態宣言が解除された地域で行い、再拡大の兆候をつかみ早期の感染拡大防止策につなげるものが目的であり、感染症を抑制する対策そのものではない。
例えば、無症状者のPCR検査は、すでに緊急事態宣言が解除された栃木県で行われている。誰がどう考えても、無症状者の検査は、感染が最も深刻な東京で行うべきだ。PCR検査を感…
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