<ご意見募集>香山リカさんが問う  在留資格ない人のワクチン接種どう考える

香山リカ・精神科医
香山リカさん=平野幸久撮影
香山リカさん=平野幸久撮影

 まず、今回、読者に意見を求めたいことをあえて単純化して記したい。それは、「出入国管理局に収容されている“不法滞在”の外国人にも、平等にコロナワクチンを接種すべきか」ということだ。

 いささか強烈な書き方をしてしまったので、もう少しくわしく以下に説明したい。

 この正月、困窮者を対象とした相談会に医師として参加した。私への相談者の多くが出入国在留管理庁(入管施設)に収容され、仮放免されている外国人だった。彼らは労働を許可されておらず、健康保険も持たず、生活保護の申請もできない。つまり持病があっても医療を受けることができず、困り果てて相談会に来たのだ。

 アフガニスタンから来たという女性は、「難民申請をしたが認定されなかった。すぐに退去しろと言われたが母国は危険なので帰れない。その後、入管施設に入れられて年末に仮放免になった。血圧が高くて薬がほしいがお金がまったくない」と言っていた。2019年、日本で難民認定申請をした人は10375人で、認定されたのはわずか44人なのだ。

 しかし、難国際医療NGOで難民キャンプにかかわった経験を持つなど難民問題にくわしい参院議員・谷合正明氏<ワクチンは難民にも 後回しにしてはいけない>は、「日本は難民に冷たい」という評価に待ったをかける。実は「日本は難民を受け入れている途上国に支援をしており、そのことへの国際的な評価は高い」と言うのだ。

 その上で谷合氏は、コロナ禍で難民へのワクチンの供給が後回しにされることに懸念を示し、難民へのコロナのワクチンを確保するための国際協調の枠組みが必要だと主張する。「世界の難民にもワクチンを」というこの谷合氏の主張に異議を唱える人は、少ないのではないだろうか。

 では、足元の国内となるとどうだろう。数は多くないが日本にいる難民、そして入管施設に収容されている人たち、仮放免中の人たちも、今後、公平にワクチンを受けることができるのだろうか。

 3月6日、名古屋の入管施設に収容されていた30代のスリランカ人女性が亡くなった。<名古屋入管でスリランカ人女性死亡>面会を続けていた支援者が体調の悪化を感じ、担当部局に入院の必要性を訴えていたが聞き入れられなかった。

 そのほかにも以前から、各入管施設で被収容者の死亡事例が起きている。私が相談会で会った仮放免中の人たちも、入管施設の中でも外に出てからも十分な医療が受けられず、中には病状が深刻な人もいた。

 「世界の難民にワクチンを」という訴えにうなずいた人は、日本にいる難民、難民申請が許可されずに在留資格を失ったまま滞在している人、とくに入管施設にいる人や仮放免中の人にも日本国民と同じようにワクチンを接種すべきだ、という考えに同意できるのだろうか。

 入管施設の中や外での彼らへの不十分なケアや社会の冷たい態度を見ていると、とても「ワクチンだけは公正に」とはならないのではないだろうか。

 ここであえて私自身の意見を述べると、私は国内の難民、在留資格を失った外国人、入管施設に収容されている人たちにも、公正にワクチンを接種すべきだと考える。人道上の観点からだけではなく、日本の防疫という観点からも、彼らへのワクチンだけが後回しとか実施されないということがあってはならない。

 さらにそれよりもまず、彼らに対して適切な医療が施されないまま、非人道的な収容が長期間にわたって続くという現状をなんとかしてほしい。母国で大学を出て教師になる夢をかなえるため来日し、仕送りが途絶えるなどする中で在留資格を失い、入管施設で33歳の命を失わなければならなくなったスリランカ女性のような悲劇を、これ以上、繰り返してはならない。

あなたの意見を

 在留資格のない人たちへのワクチン、入管施設に収容されている人たちへの適切なケア、そして何より、今後も日本で暮らすことを希望している人たちへの在留資格の許可を。

 この3点すべてでも、どれかひとつでも、あなたの考えを聞かせてほしい。

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精神科医

1960年北海道生まれ。東京医科大卒。専門は精神病理学。医師の立場から現代人の心の問題について発言を続ける。北海道むかわ町国民健康保険穂別診療所副所長。