米国にいらだつ北朝鮮のミサイル発射

坂井隆・北朝鮮問題研究家
  • 文字
  • 印刷
第1回朝鮮労働党市郡責任書記講習会で開講の辞を述べる金正恩総書記=平壌・党中央委員会本部会議室で2021年3月3日(朝鮮中央通信=朝鮮通信)
第1回朝鮮労働党市郡責任書記講習会で開講の辞を述べる金正恩総書記=平壌・党中央委員会本部会議室で2021年3月3日(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 北朝鮮は3月25日、約1年ぶりとなる弾道ミサイルを発射した。米朝関係は、新たな局面を迎えたともいえる。これまでの動向から北朝鮮の意図を分析する。

米韓合同軍事演習を非難

 最初の動きは3月16日に「金与正朝鮮労働党中央委員会副部長」名義の談話(15日付)が報じられたことだ。談話は、8日から開始された米韓合同軍事演習を「同族を狙った侵略戦争演習」ときめつけ、韓国当局に対する厳しい非難を繰り返した。

 ただし、米国に対しては「我々の地に火薬のにおいを漂わせたくて躍起になっている米国の新行政府にも一言忠告する。今後4年間、足を伸ばして寝たいのが望みなら、初めからみっともなく寝そびれる仕事を作らない方がよかろう」とけん制する表現がすべてだった。米国から対北朝鮮政策の軟化を引き出すよう韓国文政権に迫ることが主な狙いだったとみられる。

姿勢変化を要求

 3月18日には、崔善姫第1外務次官の談話(17日付)が報道された。談話は、2月以降、米国から外交的接触を受けたが応じていないことを明らかにした上で、対話実現には「互いに同等に対座し言葉をやりとりすることのできる雰囲気」が必要と主張する。そして「米国で政権が変わった以後」の政権関係者及び当局のさまざまな北朝鮮に対する発言や措置などを具体的に指摘し、「強圧的な姿勢を維持している」との評価を示した。

 その上で、米国が北朝鮮との対話を望むなら、「初めから(前述のような)態度を変えなければならない」のであって、米国の側に「新たな変化、新たな時期を甘受し、受けいれる準備」がない限り対話は時間の浪費にすぎないと主張。同時に「強対強、善対善」という原則を改めて強調した。

北朝鮮国籍者の米国引き渡しに反発

 3月19日、北朝鮮外務省は米当局が資金洗浄などの容疑を理由に求めていたマレーシア在住北朝鮮国籍者の身柄が米国に引き渡されたことを「捏造(ねつぞう)、謀略」などと強く非難する声明を発表した。

 ただし、引き渡しは2019年5月の米国からの要請に基づく処分が、今年3月のマレーシア最高裁の決定で確定したことを受けて実行されたものだ。そのためか、北朝鮮の対応はマレーシア政府に対しては国交断絶を宣言する一方、「主犯」ときめつけた米国に対しては「応分の代価を支払うことになる」とのあいまいな表現にとどめた。

中朝連携を誇示

 3月23日付の「労働新聞」は、金正恩総書記と中国・習近平総書…

この記事は有料記事です。

残り1067文字(全文2073文字)

坂井隆

北朝鮮問題研究家

1951年生まれ。78年公安調査庁入庁、北朝鮮関係の情報分析などに従事、本庁調査第二部長を最後に2012年退官。その後も朝鮮人民軍内部資料の分析など北朝鮮研究を継続。共編著書に「独裁国家・北朝鮮の実像」(2017年、朝日新聞出版)、「資料 北朝鮮研究Ⅰ 政治・思想」(1998年、慶応義塾大学出版会)など