不妊治療で知った「遅れている」日本の流産・中絶方法

塩村あやか・参院議員
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塩村あやか氏=竹内紀臣撮影
塩村あやか氏=竹内紀臣撮影

日本は搔爬・吸引手術、世界は経口薬の衝撃

 流産・中絶手術は基本的に同じ処置だが、実は日本は国際的な標準から非常に遅れている。この点に関しては日本は「後進国」だ。知ったとき、私は衝撃を受けた。

 不妊治療では流産が多い。厚生労働省の資料によると、不妊治療における流産率は35歳で20%、40歳で35%、45歳以上では66%になる。不妊治療での流産は子どもが欲しくて治療を受け、できたという喜びの後に来るものなので、身体的な負担と同時に、精神的な負担が非常に大きい。その時に、負担の大きい手術に直面する。

 独協医科大学埼玉医療センターリプロダクションセンターの調査によると、流産後1カ月で3割の女性が心的外傷後ストレス障害(PTSD)にかかる。流産手術に選択肢を作ることによって、この苦しみを少しでもなくしていかなければならない。

 現在日本で行われている流産・中絶方法は、搔爬(そうは)法と電動吸引法だ。セットで用いられることが多いが、女性の体への負担が大きい方法であるにもかかわらず、8割を占めるという。より負担の少ない手動真空吸引法もあるが、あまり普及していない。搔爬法を中心とした方法が、戦後ずっと基本的に変わっていない。

 女性の体への負担が少なく、安全性も高い経口薬による流産・中絶方法(セーフアボーション)は世界保健機関(WHO)も推奨しており、世界77カ国で承認され、経済協力開発機構(OECD)37カ国中では34カ国で承認されている。

 にもかかわらず、日本では未認可だ。服薬による流産・中絶方法があること自体、日本では知られていない。

中絶への懲罰的な考え方

 日本で搔爬法が主流である理由についてはコスト面などが指摘されている。経口薬については、出血も伴うため、不安であるとか、また病院が対応しにくい点があるとされる。しかし、すでに海外では一般的に使われており、医師の処方によってきちんと説明すれば解決できる問題だ。ここまで認可が遅れているのは、背景に中絶に対する懲罰的な考え方があるためではないか。

 経口避妊薬(アフターピル)も同様だが、服薬という手段が増えることで、女性が自分で選ぶ、選択肢を持つ、早めに決断できるようになることが、身体面からも精神面からも重要だ。

 しかし、情報が与えられていない。この問題を国会で取り上げたところ、ツイッターなどに多くの反響が寄せられた。経口薬について「初めて知った」という人が多くいた。女性の自己決定に関わる選択肢が知らされず、タブーになってしまっている。

 女性に対する懲罰的な考え方は、日本社会の奥深いところにあるにもかかわらず、日常では見えにくい。一方で、法律を決める国会議員がいる永田町には、しっかり残っていると私は感じている。

 選択的夫婦別姓の問題でも同じだが、女性の自己決定権を否定する考え方はいまだにはびこっている。これがこの問題が進まない本当の理由ではないか。不妊治療当事者となり、闇を見た気がする。

「国会議員を不妊治療離職」で悩む

 そもそも、非正規が増え、実質賃金が下がるなかで、安心して子どもを産めない社会だ。私自身もそうだが、就職氷河期世代で、非正規から脱したい、キャリアを築いてから、と思いながら、もう少しもう少しと働いてきて、ようやく子どもを産もうと思った時には30代後半、40歳を超えている。残された可能性は不妊治療になる。

 しかし、妊娠したわけではないので、職場で相談することが難しい。排卵・移植のタイミングは仕事に合わせて変更することはできないため、急に仕事が入ると対応できない。仕事をしながら不妊治療をしている女性のうち、4人に1人が不妊治療を理由に退職するとされる。

 私自身も不妊治療を受けていて、仕事をとるか子どもをとるか本当に悩み、苦しんだ。治療予定日に急に重要な会議が入ったりする。電話がかかってきたり、「評価が下がる」と言われたりもした。

 国会議員として初の不妊治療離職に自分がなってしまうのではないかというぐらい悩んだ。相談しても民間で導入されているような制度もないため、出血を抱えながら仕事をこなす日があることは変わらなかった。後進のことも考え、意を決して、党役員に文書で民間で推進されている制度の導入や合理的配慮の申し入れもした。

 こうした悩みや不安は、仕事をしながら不妊治療をしている女性はみな経験していることだと思う。そして多くの人が仕事を辞めることを選んでしまう。するとキャリアが中断され、女性の貧困や、女性の平均年収が男性よりも低い問題につながっていく。

早期の認可と保険適用を

 参院内閣委員会で、経口薬の認可に向けた手続きが進んでいるという答弁を政府から引き出した。私の質問に対して、三原じゅん子副厚労相は認可された場合は流産については保険適用されると答弁した。

 不妊治療の保険適用は2022年度からなので、経口薬の保険適用が同時に実現すれば、不妊治療における流産の対応も変えられる。不妊治療に保険が適用されることになって関心が高まり、さまざまな問題点が明らかになってきている。この機会に、政治的な決断で一気に問題を解決しなければならない。

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塩村あやか

参院議員

1978年生まれ。放送作家、東京都議を経て2019年参院初当選。参院東京選挙区、当選1回。立憲民主党。