「成功体験」をいますぐ捨てるべき まだ間に合う新型コロナ対策

森永卓郎・経済アナリスト、独協大学教授
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森永卓郎氏=武市公孝撮影
森永卓郎氏=武市公孝撮影

日英逆転

 英国の新型コロナ新規陽性者数が急減している。英国の新規陽性者数は、ピークだった1月8日に6万8053人だった。くしくも、日本も1月8日が新規陽性者数のピークだったが、その数は7883人と英国の約9分の1だった。

 ところが、それから3カ月弱が経過した4月4日の英国の新規陽性者数は2297人とピーク時の約30分の1にまで減少し、日本の同日の新規陽性者数2472人を下回った。新規陽性者数が減少を続ける英国と感染第4波に向かって感染拡大を続ける日本の差は顕著だ。

 いまや約2カ月半ぶりに新規陽性者数が4000人を超えた日本の感染拡大は、英国型の変異株が原因だとも言われている。しかし、皮肉にも、その英国型の本家である英国が、感染収束に成功しかけているのだ。なぜ、日本は感染抑制に失敗してしまったのか。

 最大の理由は、ワクチン接種率の差だ。オックスフォード大学の「データで見る我らの世界」というサイトによると、4月13日現在で、少なくとも1回のワクチンを受けた国民の比率は、英国が47.5%であるのに対して、日本は0.9%に過ぎない。日本の接種率は先進国中最低レベルだ。このことから、ワクチン接種が相当高い効果を持つことと、日本の外交が、ワクチン争奪戦で惨敗したことが分かる。

 ただ、重要なことは、英国のコロナ収束は、ワクチンだけでもたらされたものではないということだ。英国は変異株が猛威をふるい始めた昨年12月19日に、ロンドンやイングランド南東部、東部でロックダウン(都市封鎖)を宣言した。

 仕事は在宅勤務を基本とし、インフラや教育関係など自宅で仕事ができない場合のみ、職場への出勤が許される。レストランやパブなどの屋内営業は禁止、友人との交流は屋外で最大6人までとなった。このような徹底的な行動規制を実施したうえで、ワクチン接種による感染抑制に打って出たのだ。変異株の脅威を強く認識していたからだ。

 それに対して日本は、1月7日に1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)に、緊急事態宣言の発出を決定した。イギリスより19日遅れたうえに、その内容も飲食店の夜間営業自粛を中心としたものだった。

 なぜ、夜間の飲食の自粛で感染が収束できると考えたのか。感染経路別の感染者数をみると、当時から圧倒的に多いのは感染経路不明で、その他に職場内や家庭内など感染経路は多様化していた。しかし、政府はそうした感染経路を含めて、ほとんどの感染の原点は夜間の飲食だという推定に基づいて、夜間飲食の自粛を求めたのだ。

 その推定はある程度は当たっていた。2回目の緊急事態宣言で、新規陽性者数がおよそ8割減ったからだ。しかし、感染は収束には向かわず、緊急事態宣言期間の終盤では、新規陽性者数が横ばいから、上昇に転じていた。それにもかかわらず、緊急事態宣言は解除された。夜間飲食の自粛だけでは感染抑制ができないことが明らかになったのだから、解除自体は正しいが、代わりの手段を講じる必要があることは明白だった。

 ところが、政府がまん延防止等重点措置で取ったのは、再び飲食店の夜間営業の自粛という手段の繰り返しだったのだ。

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森永卓郎

経済アナリスト、独協大学教授

1957年生まれ。日本専売公社、経済企画庁、三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)などを経て独協大経済学部教授。専門はマクロ経済、計量経済、労働経済。コメンテーターとしてテレビ番組に多数出演。著書に「年収300万円時代を生き抜く経済学」(光文社)など。