ミャンマー国軍のクーデター後、多くの丸腰の無辜(むこ)の市民が国軍によって殺害された。青少年も、小さい子どもも、女性も、またけがをしている人を助けようとした人にも銃口を向ける。デモに参加している人以外でも、家からデモを見ていた子どもを狙撃する。あるいは深夜家に押し入って殺害する。
殺人集団であって、軍としての尊厳も誇りもプライドも、ゼロどころかマイナスだ。暗たんたる気持ちだ。なぜそこまでの行為に走るのか。過去のクーデターと比べても残虐性が際立っている。
3月27日の国軍記念日以降も連日、死者が出ている。国軍は国民の強い抵抗がこれほど長く続くことを想定していなかったのだろう。いらだちもあるし、力で押さえつけるしかないという、ある意味、逆上したような状況だ。日本・ミャンマー友好議員連盟会長として強く懸念している。
こんなことをしていてはミャンマーに未来はない
日本としては国際社会の圧力によって、国軍の暴力行為を一刻も早くやめさせなければならない。こんなことをしていてもミャンマーの未来は全く開けないということを国軍に気づかせることに全力投球しなければいけない。
人権や人道について国外から発言することは内政干渉ではないということを国際社会が確認する必要がある。
日本ができることは話し合いの場を作ることだ。アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)ら昨年11月の選挙で選ばれた人たちこそが国民の代表だ。国民の代表と国軍が話し合いができるテーブルをアレンジすることが最大の目標だ。今のところ国軍にはその気が全くない。しかし、あきらめずに説得を続けることが今、一番大事なことだ。
新規のODA停止は効果がある
「欧米は制裁をした、日本はどうする」という論調があるが、しかし欧米の制裁も基本的には特定の軍人の資産を凍結するやり方が大半だ。制裁ではあるが、実際の効果はそれほどないのではないか。
実は一番効果があるのは、日本が政府開発援助(ODA)を止めることだ。私の理解では事実上、新規のODAは行わず、決まっているODAでもまだ始まっていないものについては始めない。このほうが欧米の制裁よりも打撃は大きいと思う。
一方で、ODAを止めると、国民も含めてミャンマー全体に影響が及ぶ。国軍だけに打撃を与えるやり方はない。日本はミャンマーの経済を強くし、生活を豊かにする支援をずっとしてきた。それを止めることは結果的には国民にも影響する。そのことをミャンマーの国民にも国際社会にも理解してもらいながら、日本も判断していかなければならない。
ASEANに外交努力を
欧米が制裁などで厳しい態度をとり、日本も新規のODAを止める、そのなかで国軍は中国とロシアに頼るだろうという見方がある。しかしそれほど単純ではない。
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