デジタル賃金 セキュリティーは万全か 拙速に導入すべきではない

古賀伸明・元連合会長
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古賀伸明氏=内藤絵美撮影
古賀伸明氏=内藤絵美撮影

 雇用され働く者の賃金は、労働基準法(労基法)第24条で「賃金は、通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない」と規定されている。物などの現物支給は禁止されており、具体的には(1)「通貨」で(2)「直接」(3)「全額」を(4)「毎月1回以上」の頻度で(5)「一定期日」に、企業は労働者に賃金を払わなければならない。この(1)~(5)は「賃金支払いの5原則」として労基法に定められている。

 ただし例外的に、企業と労働者間の同意などがあれば、労働者が指定する銀行その他の金融機関の口座や、証券総合口座への振り込みなどで賃金を支払うことが労基法の施行規則で認められている。

 今では当たり前になっている銀行口座への賃金振り込みは、法律上では例外となっているのだ。

 これらは、賃金が生活の基盤であることを如実に表している。

スマホで受け取り?

 この賃金の支払い方法が、菅義偉政権が掲げる目玉政策の一つであるデジタル化の推進のもとで変化しようとしている。

 労働者の賃金支払い方法に、資金移動業者を追加する方針だ。その内容は、PayPay(ペイペイ)、LINEペイなどを運営する資金移動業者が提供するスマートフォンのアプリでデジタルマネーとして賃金を受け取り、即座にスマホ決済ができるようになる仕組みである。

 昨今、キャッシュレス化が急速に進み、スマートフォン1台あればほとんどの決済が可能となり、現金を持つことが少なくなってきている。政府は生活資金の基盤である賃金支払いのデジタル化を解禁することで、社会のキャッシュレス化を加速させるとともに、国全体のデジタル化を促したい狙いがあるのだろう。

 公正取引委員会が昨年行った調査では、…

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古賀伸明

元連合会長

1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。現在は連合総研理事長。