国家公務員の定年延長でパフォーマンスは改善するか

田中秀明・明治大学公共政策大学院教授
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田中秀明氏=宮武祐希撮影
田中秀明氏=宮武祐希撮影

 去る4月27日、国家公務員の定年を現行の60歳から65歳に引き上げるための国家公務員法改正案が衆院で可決され、今国会で成立する見込みとなった。

 法案は、もともとは昨年の国会に提出されたものであるが、東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を政府が法律の解釈変更で延長しようとしたことから、定年の問題が批判され、廃案になった。

 今回は、検察幹部に定年延長を認める特例規定を削除した改正法案が提出された。検察幹部の問題はともかく、国家公務員の定年延長で、公務員の労働環境が改善し、ひいては行政のパフォーマンスは改善するのだろうか。

定年延長の特例規定

 政府の法案説明資料によると、「平均寿命の伸長や少子高齢化の進展を踏まえ、豊富な知識、技術、経験等を持つ高齢期の職員に最大限活躍してもらうため、定年の65歳引上げについての国会及び内閣に対する人事院の「意見の申出」(平成30年8月)に鑑み、国家公務員の定年を引き上げる」という。

 具体的には、現在60歳の定年(事務次官62歳などの例外あり)を、2023~24年度に61歳とし、その後2年間で1年ずつ延長し、31年度から65歳(完成形)とするとしている。これに伴い、60歳に到達した局長などの管理監督職を他の職に異動させる「役職定年制」が導入され、60歳に達した職員の給与は従前の7割となる。

 これは民間に倣うものであり、給与を抑制し昇進の機会を維持するための仕組みである。

 少子高齢化を乗り切るための方法はより多くの人がより長く働くことであり、その意味で、定年延長についての政府の説明は是認するが、筆者が懸念するのは、改正法案に含まれている「特例規定」である。

 改正法案には、役職定年で公務の運営に著しい支障が生ずる場合には、引き続き管理監督職として勤務できる特例が設けられている(3年が上限)。例えば、次官は65歳まで働くことも可能である。その結果、若手・中堅は、役職定年が導入されても、昇進機会が失われる可能性があるのだ。

年功序列人事の弊害

 国家公務員の人事管理で特徴的な仕組みとして、「キャリア制度」がある。これは、採用時の総合職試験で幹部候補者の選抜を行い、採用同期の者は一定年齢まではほとんど差を付けない早い昇進と遅い選抜による仕組みである。

 ただし、幹部ポストの数は限られているため、同期の中で出世できない者は、天下りなどで早期退職する。また、年次…

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田中秀明

明治大学公共政策大学院教授

 1960年生まれ。85年大蔵省(現財務省)入省。オーストラリア国立大学客員研究員、一橋大学経済研究所准教授、内閣府参事官などを経て、2012年より現職。専門は財政・ガバナンス論。著書に「官僚たちの冬 霞が関復活の処方箋」など。