Social Good Opinion

「伝統工芸」ってダサい?

萩原雅之・「モノゴト」代表
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萩原雅之さん。川越の和蝋燭屋「HAZE」さんにて=興膳和希さん撮影
萩原雅之さん。川越の和蝋燭屋「HAZE」さんにて=興膳和希さん撮影

 「最近、全国の職人さんと会いながら、伝統工芸の魅力を伝える活動をしているんだよね!」

 そんな私の一言に食いついてくれる同世代の人間は少ない。

 大学を休学し、全国各地の職人さんに会いに行く私のような存在はマイノリティーのようだ。

 とはいえ、伝統工芸に興味のなさそうな友人を工芸品のお店に連れて行ったり、全国の工芸品を紹介しているInstagram「モノゴト」の写真を見せたりすると、ほとんどの友人は驚いて不思議そうな表情をすることが多い。

 「伝統工芸ってこんなカッコ良かったんだ」と。

 若い人の間で「伝統工芸」という言葉が悪い方向に独り歩きし、なんとなく取っ付きにくくてダサいものであるというイメージが先行してしまっている気がする。

 そんなイメージを払拭(ふっしょく)し、もっと多くの人に日本の美しく大切な文化である伝統的な工芸品を広めたいと思い、私は日本の伝統工芸との出会いを生み出す「モノゴト」を立ち上げた。

CAMPFIREにて実施中のクラウドファンディング「伝統工芸を、救おう。」
CAMPFIREにて実施中のクラウドファンディング「伝統工芸を、救おう。」

「スマホ上の世界=現実世界」という時代

 若い世代にとって、スマホ上の世界がすなわち現実世界と化してきているなか、伝統工芸をはじめとする日本の文化の情報はデジタル上に少なく、また十分に魅力を伝えることができていない現状があります。

 そんな中、私が全国の職人さんたちとお会いして感じたのは、彼らがまだまだデジタルの知識やその重要性を知らないことでした。しかし、職人さんたちは実際にお客さんにお店に来ていただき、自分の目で工芸品を見てその良さを知ってもらって魅力を伝えていきたいという強い思いがあるからこそ、デジタルやインターネットになかなか踏み込めないし、身近にも相談できる相手もいない。

 そんな状況に重なり、デジタルへの不可逆的な流れをつくり出したコロナ禍が起きました。私は、全国各地のものづくりを現場で見て職人さんと会話をする中で、ものづくりの現場とデジタル世界の仲介役として、工芸の魅力を最大限伝えていきたいと強く思うようになりました。

諸石健太郎さん 輪島の漆器ブランド「YUKAKU」さんにて=筆者撮影
諸石健太郎さん 輪島の漆器ブランド「YUKAKU」さんにて=筆者撮影

 そのため私が立ち上げた「モノゴト」では、InstagramやYoutubeを使って工芸品の美しさをありのまま伝え、職人さんの思いや哲学やその工芸品の文化的背景などを含めて発信しています。

 そして工芸の世界への入り口を広げつつ伝統工芸品の魅力をオンライン上で伝えていき、最終的に興味を持って職人さんのところへ足を運んでくれる人が一人でも増えたらと考えています。

伝統工芸と「出会う」機会をオンラインで、オフラインで作り続ける

須本雅子さん 岡山の烏城紬保存会にて=筆者撮影
須本雅子さん 岡山の烏城紬保存会にて=筆者撮影

 オンライン上で伝統工芸の良さを伝えることが重要だという話をしましたが、手で触れて自分の目で見て直感的に分かる部分も多い工芸品は、オンラインで魅力を全て伝えるのに限界があるのも事実です。

 そのため、私は飲食店さんと職人さんや工房とをマッチングし、日本全国の飲食店さんでこだわりのある本当に良い伝統工芸品を使っていただき、食事や飲み物を楽しめる世界を作りたいと考えています。

 実際にそのような動きは宿泊業や飲食業にも段々広がりつつあり、私もそのような職人さん・飲食店さん・消費者の方々に三方よしとなるエコシステムを作っていけたらと考えています。

伝統工芸に触れて 文化体験型の旅館、開業 雰囲気異なる3タイプの宿 越前市 /福井

作り手である職人さんのこだわりや思いが正当に評価される社会へ

森敏彰さんと筆者(右) 岡山備前焼「宝山窯」さんにて=筆者撮影
森敏彰さんと筆者(右) 岡山備前焼「宝山窯」さんにて=筆者撮影

 全国の職人さんとお話する中で気づいたことがもう一つあります。

 それは、そもそも業界の構造としてあまり職人さんに利益が残らないということであり、その結果、後継者問題やコロナ禍での大ダメージが生まれてしまっているのではないかと感じます。

 卸売業者さんや百貨店さんは工芸品の在庫を抱え、しかもそれを購入していただかないといけないのでどうしても定価の4~5割程度を取ることになり、それでも利益としてギリギリだという構造があります。

 そのため、私は作り手である職人さんと買い手であるお客さんを直接オンラインでつなげて間にかかる手数料を安く抑えられる、そんな仕組み作りをして職人さんと買い手の方々に選択肢を増やすことができたらと考えています。

 私が伝統工芸のものづくりの世界で実現したいことを、既に農業や漁業の1次産業の世界で実現されているのが「食べチョク」さんです。

 <毎日21世紀フォーラムから After コロナの「食べチョク」 一次産業と消費者をつなぐ

 作り手である職人さんと買い手をつなげて直接お互いの声が届き、職人さんのこだわりが正当に評価されて利益がしっかりと還元される仕組みを「食べチョク」さんのように作っていけたら。作り手と買い手がWINWINになる関係を、伝統工芸の世界でも実現できたら。そんな思いで日々「モノゴト」の活動を続けています。

 「Social Good Opinion」のインスタグラムアカウントを開設しました。そちらも合わせてご覧ください。

萩原雅之

「モノゴト」代表

 1997年生まれ。国際基督教大学を休学中。伝統工芸との出会いを作り出す「モノゴト」代表。幼稚園からサッカーを始め、全国優勝や海外でのプロサッカー選手経験を経たのち、職人さんに会って現場を知るため日本放浪の旅へ。工芸品の美しさとカッコ良さ、職人さんたちの哲学と人柄に惹かれ「モノゴト」を立ち上げる。コロナ禍や後継者問題に苦しむ伝統産業を継承すべく奮闘中。<Instagram「モノゴト」