反発する北朝鮮「米国は旧態依然の敵視政策」

坂井隆・北朝鮮問題研究家
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北朝鮮の平壌体育館で行われた朝鮮労働党第6回細胞書記大会の3日目会議で閉会の辞を述べる金正恩朝鮮労働党総書記=2021年4月8日(朝鮮中央通信・朝鮮通信)
北朝鮮の平壌体育館で行われた朝鮮労働党第6回細胞書記大会の3日目会議で閉会の辞を述べる金正恩朝鮮労働党総書記=2021年4月8日(朝鮮中央通信・朝鮮通信)

 米国のサキ大統領報道官は4月30日、バイデン政権発足以来進めてきた対北朝鮮政策の見直しが終わったことを明らかにした。

 北朝鮮核問題の本質をどう見るかによって、米朝関係の今後は大きく左右される。

北朝鮮「核問題」に対する二つの見方

 第一の見方は、北朝鮮が国際法に違反して開発している核戦力をいかに放棄させるかという問題ととらえる。この立場からすると、米朝交渉は立てこもり犯と警察官との交渉のようなものになる。

 目標はあくまでも「北朝鮮の非核化」で、それを「完全かつ検証可能で不可逆的な方法による非核化」(CVID)の形で実現することが理想だ。多くの日本人が共感するのは、こうした見方だろう。

 第二の見方は、北朝鮮の核戦力放棄をもたらしうる国際環境(とりわけ対米関係)をどう構築するかという問題ととらえる。この場合、目標は「朝鮮半島の非核化」と表現されることが多い。

 米朝は基本的に対等な立場で関係正常化の方法を交渉し、北朝鮮の核戦力はその過程で放棄されることが期待されている。北朝鮮の固執する立場であり、韓国の「進歩」勢力や文在寅政権も同調的だ。

変わる米国の姿勢と日韓の「綱引き」

 米オバマ政権下の「戦略的忍耐」政策は、第一の見方を基調に譲歩を拒否しつつ兵糧攻めを狙ったものだった。トランプ政権は、当初、同様の立場から核放棄を強く迫ったが、突然かじを切って米朝首脳会談に応じ、シンガポールで第二の見方を取り入れた米朝共同声明を出した。しかし、いつのまにか第一の見方に戻り、具体的な進展はなかった。

 バイデン政権に関しては、日本政府が第一の見方を、韓国政府が第二の見方を強く推して、綱引き状態にあるようにみえる。菅義偉首相が訪米した際の日米共同声明では、「北朝鮮の完全な非核化」を目指すことがうたわれ、第一の見方を基調に据えることができたようにもみえる。

 ただし、CVIDの文言は盛り込まれなかった。米国側が消極的だったためとの報道もある。サキ報道官ら高官の発言も、最近は「目標は朝鮮半島の非核化」で一貫している。しかも、韓国政府は、5月下旬とされる文大統領の訪米…

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坂井隆

北朝鮮問題研究家

1951年生まれ。78年公安調査庁入庁、北朝鮮関係の情報分析などに従事、本庁調査第二部長を最後に2012年退官。その後も朝鮮人民軍内部資料の分析など北朝鮮研究を継続。共編著書に「独裁国家・北朝鮮の実像」(2017年、朝日新聞出版)、「資料 北朝鮮研究Ⅰ 政治・思想」(1998年、慶応義塾大学出版会)など