ミャンマー民主化勢力の「革命」は非現実的

春日孝之・元毎日新聞アジア総局長兼ヤンゴン支局長
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アウンサンスーチー氏の肖像を掲げて抗議する人々=ミャンマーの最大都市ヤンゴンで2021年4月24日(AP)
アウンサンスーチー氏の肖像を掲げて抗議する人々=ミャンマーの最大都市ヤンゴンで2021年4月24日(AP)

 混迷するミャンマー情勢は、国軍のクーデターに抗議する勢力が「国家統一政府」の設立を宣言(4月16日)して、新たな局面に入っている。レジスタンス勢力への弾圧を緩めない新たな「軍政」に対し、国軍の解体を目指す並行政権が対峙(たいじ)する構図で、今後の展開によっては「破綻国家」への道を突き進むシナリオも危惧される。

危うい「連邦民主憲章」

 総兵力40万の国軍を擁する軍政に対し、国家統一政府は「サイバー政府」と呼ばれる。国家顧問はアウンサンスーチー、大統領にはウィンミンの両氏がクーデター前の状況から横滑りした形で、2人は多数派ビルマ族。共に拘束下にあり、事実上のトップに相当する副大統領にカチン族、同ナンバー2の首相にはカレン族の武装組織関係者が座った。

 国家統一政府は、国軍が長年にわたって内戦を繰り広げてきた武装勢力との連携を強める姿勢を示している。武装組織は約20あり、半数ほどが協力姿勢を示しているようだ。

 国家統一政府の前身は、「連邦議会代表委員会(CRPH)」。2020年総選挙で圧勝したスーチー氏率いる政党「国民民主連盟(NLD)」の議員たちが中心になり、クーデター後に組織した。「非暴力主義」のスーチー路線に対し、武力弾圧が激しくなるにつれて「自衛のための武装」を容認していた。

 委員会は3月末、「連邦民主憲章」を採択したと発表した。連邦国家の構築に向けた新憲法草案のようなもので、目指すべき民主体制の理想を描いている。しかし、国軍との交渉を前提としたブラフならともかく、この内容に私は危うさを感じている。

国軍を解体、連邦軍創設

 憲章は、国軍に政治介入など特権的立場を認めた現憲法を廃止し、国軍を解体して連邦軍を創設する、と打ち上げているからだ。

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春日孝之

元毎日新聞アジア総局長兼ヤンゴン支局長

 1961年生まれ。85年に毎日新聞社入社。ニューデリー、イスラマバード、テヘラン支局などを経て2012年よりアジア総局長。翌年ヤンゴン支局長を兼務。18年退職。最新刊に「黒魔術がひそむ国ミャンマー政治の舞台裏」(河出書房新社)。他に「アフガニスタンから世界を見る」(晶文社)、「イランはこれからどうなるのか『イスラム大国』の真実」(新潮新書)、「未知なるミャンマー」(毎日新聞社)がある。