バイデン政権・定点観測

「政権100日」順調な滑り出し 内憂外患も

及川正也・論説委員
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演説中に笑顔を見せるバイデン大統領=ホワイトハウスで2021年3月25日(ホワイトハウスのFlickrから)
演説中に笑顔を見せるバイデン大統領=ホワイトハウスで2021年3月25日(ホワイトハウスのFlickrから)

 1月20日に就任した民主党のバイデン米大統領は、4月29日に100日を迎えた。この100日の期間は、新政権の内政、外交の基本方針が示され、国民が最も注目する時期でもある。「分断の克服」と「労働者の保護」を目標とする内政では、新型コロナウイルス感染症対策の1.9兆ドルに上る支援パッケージ法に署名し、2兆ドル超の大型インフラ計画を発表した。「同盟重視」と「多国間主義」を掲げた外交では、気候変動対策の枠組みであるパリ協定への復帰を表明し、公約だった各国首脳による気候変動サミットをオンラインで開催。初の対面会談を菅義偉首相と行い、中国に対抗するという強いメッセージを国際社会に発信した。おおむね順調ともいえる滑り出しをみせたこの100日を検証する。

ルーズベルト時代に類似

 「100日」を前に、バイデン氏の政権の初動を、民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領の時期と照らして類似性を指摘する論説記事がいくつか発表された。ルーズベルト大統領は世界大恐慌(1929年に発生)の深刻な影響下にある1933年に就任し、大恐慌への緊急対策を矢継ぎ早に講じたことで知られる。「最初の100日が重要だ」という表明が、いまに続く「就任100日」テストの起源になっている。

 3月中旬にニューヨーク・タイムズ紙のオピニオン面に掲載された論考は、労働問題に詳しい元同紙記者のスティーブン・グリーンハウス氏の筆によるもので、「バイデン氏とルーズベルト氏の共通点」の見出しを飾る。この中でグリーンハウス氏は「労働組合を最も擁護した大統領であるルーズベルト氏の戦術をバイデン氏は見習うべきだ」と指摘している。

 ルーズベルト氏は、ニューディール政策の実行で大企業寄りの政策を敷く一方、労働者の権利も擁護した。民間企業の従業員が労働組合を結成する権利を国が保護する全米労働関係法に署名し、成立させている。「中間層を守る」と公約したバイデン氏は、組合の結成条件を緩和し、企業側の抵抗を困難にする「組合結成権利保護法案」(PRO法案)を支持し、2兆ドル超のインフラ法案に組み込むよう要請した。

 1960年代前後には労働者3人に1人が組合員だったが、いまや16人に1人だ。この間、給与は伸びず、所得格差が広がった。バイデン氏は、労組委員長出身でボストン市長のマーティン・ウォルシュ氏を労働長官に起用。有給の病欠や医療休暇を手厚くし、最低賃金を時給15ドル(現行同7.25ドル)にする政策を打ち出している。それを実現すれば、ルーズベルト氏をしのぐ「最も労働者を擁護する大統領」になるのも夢ではない。

 もう一つは、外交の面からルーズベルト氏と比較した論評で…

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及川正也

論説委員

 1961年、神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。88年毎日新聞社に入社。水戸支局を経て、92年政治部。自民党下野から自社さ政権、野党再編などを経て民主党政権に至る激動の日本政界を20年余り追い続けた。2005年からワシントン特派員として米政界や外交を取材。13年北米総局長。16年4月から論説委員。