臨機応変に欠ける日本のコロナ対策 安易すぎる自衛隊動員

小川和久・静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト
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小川和久氏=北山夏帆撮影
小川和久氏=北山夏帆撮影

 このところ、「新型コロナウイルス感染症と日本の危機管理」のテーマで講演する機会が増えている。講演の目的は、第5波以降に迅速に対処するため、そして未知の感染症が出現したときのため、これまでの取り組みから教訓を学ぶところにある。

 しかし、現状を直視するほどに問題の深刻さに驚愕(きょうがく)させられている。

大事なのは「拙速」「臨機応変」

 言うまでもなく、危機管理の要諦は拙速と臨機応変である。時間との勝負にもなる。

 必要なことを適切なタイミングで実行できなければ国を守り、国民を救うことはできない。首相は素早く優先順位を決め、解決策を断行する必要がある。一時的に脱法行為が生じるかもしれないが、それを恐れず問題解決に取り組み、目的達成と同時に可及的速やかに健全化させる。それが成熟した民主主義国というものだ。

 ところが日本の場合、スピードだけでなく臨機応変の姿勢が決定的に欠けている。

 例えばワクチン接種の優先順位だ。全米科学アカデミー、全米医学アカデミーなど3者からなる米国アカデミーズが優先順位を提示したのは昨年10月。路上生活者の施設なども含めて5段階が明示されていた。米軍への接種は12月段階で開始された。

 日本は医療従事者への先行接種こそ2月17日に開始されたものの、重要インフラ、清掃、食料品販売、流通などに従事するエッセンシャルワーカーや、国の安全を支える消防、警察、海上保安庁、自衛隊の必要な人員への優先接種の方針はない。

 国家社会の安全なくして、医療活動もあり得ないことが理解されていない結果だ。西村康稔経済再生担当相、河野太郎行政改革担当相は情報収集を役人任せにしてはならない。

自衛隊の動員は安易すぎる

 ワクチン接種の人員が足りないからと自衛隊の医官、看護師を動員するのも安易すぎる。…

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小川和久

静岡県立大学特任教授 特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長 軍事アナリスト

 1945年生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。小渕内閣ではドクター・ヘリ実現に中心的役割を果たした。電力、電話、金融など重要インフラ産業のセキュリティ(コンピュータ・ネットワーク)でもコンサルタントとして活動。2012年4月から、静岡県立大学特任教授として静岡県の危機管理体制の改善に取り組んでいる。『フテンマ戦記基地返還が迷走した本当の理由』『日米同盟のリアリズム』など著書多数。