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ロシア製ワクチン「スプートニクV」を打ってみた

前谷宏・モスクワ支局長
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スプートニクVの入った小瓶を手にする看護師=モスクワで2020年12月9日、前谷宏撮影
スプートニクVの入った小瓶を手にする看護師=モスクワで2020年12月9日、前谷宏撮影

 ロシアは新型コロナウイルスの感染拡大後、国を挙げてワクチン開発を急ぎ、「世界初のワクチン」と銘打つ「スプートニクV」など複数のワクチンの使用を承認してきた。ただ、ロシア製ワクチンの安全性や有効性に対しては疑問の声が絶えず、ロシア国内の接種もうまく進んでいない。欧州では、ロシア製のワクチン接種を「ロシアンルーレット」に例える声さえもある。だが私は、あることがきっかけで、スプートニクVの接種をする決意をした。自身の接種体験も踏まえながら、ロシアのワクチンが信用されない理由を考えてみた。

脱力感、頭痛に軽い副反応もあったが…

 左上腕に鋭い痛みを感じてから、わずか数秒。看護師が手慣れた様子で注射針を引き抜き、接種箇所にガーゼを貼ると、「これで終わり」と処置室を出て行くよう促された。

 3月4日、私はモスクワ市内の医療施設で「スプートニクV」の1回目の接種を受けた。事前に予約していたので待ち時間はなし。初めに医師から「アレルギーはあるか」「既往症はあるか」といった簡単な問診や聴診を受けた。健康状態に問題がないと確認されると、すぐに処置室に通されて接種は終わった。緊張して臨んだだけに、拍子抜けしたというのが正直な感想だった。

 ロシアでは2020年12月から段階的に新型コロナウイルスのワクチンの集団接種が始まった。ロシアの健康保険に加入している人なら、公立病院や商業施設などに設置された会場でワクチンを無料で接種できる。当初は保険に入っていない外国人も受け入れていた。だが2月半ば以降は「ロシア国民を優先する」という理由で私のようにロシアの保険に加入していない外国人は無料接種を受けられなくなった。

 保健当局に問い合わせると、民間の病院や施設の中には有料で外国人を受け入れているところがあるという。費用は施設によってまちまちで、中には医師の診察料も含め日本円で8万円くらいの費用を請求してくるところもあった。幸い、支局の助手が1回約2000ルーブル(約3000円)で外国人を受け入れている施設を見つけてくれた。

 接種後は30分ほど施設内の待合室で待機し、ショック症状などが出ないか経過観察をした。その後、医師から体調について問われ、「問題ない」と答えた。「軽い発熱などが起こる可能性がある」「今日は飲酒や運動を控え、シャワーも浴びない方がいい」といった注意事項を聞いた後、帰宅を許された。

 それから2時間ほどたち、支局で仕事をしていると、全身に軽い脱力感を覚えるようになった。念のため、早めに自宅に戻った。ソファで仮眠を取ると、脱力感は次第に薄れていった。その代わりに左上腕の接種箇所の周辺に違和感を覚え、触ったり力を入れたりすると鈍痛を感じるようになった。翌朝には軽い頭痛も出た。ただ、いずれも日常生活や仕事に支障が出るほどの痛みではない。頭痛はその日の昼には消え、発熱もなく、接種箇所の痛みも翌日の夜にはほぼなくなった。

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前谷宏

モスクワ支局長

2004年入社。新潟支局、東京社会部、福岡報道部を経て、20年9月にモスクワ支局へ着任。ロシアや旧ソ連諸国の動静を追いかけている。過去には警視庁や福岡県警、防衛省などを担当した。