「やりすぎ」と言われるほどの感染防止対策で、何としても東京五輪の開催を

遠藤利明・元五輪担当相
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遠藤利明氏=岡本同世撮影
遠藤利明氏=岡本同世撮影

 安全・安心を担保し、東京オリンピック・パラリンピックを何としても開催したい。

 日本という国の存在を世界中に発信することもあるが、それ以上に人生を懸けて努力してきたアスリートのために、大会を成功させたい。

 アスリートたちが最高の舞台で最高のパフォーマンスを発揮できるよう努力することが我々の役割だ。

五輪には多様な要素

 コロナ禍のまっただ中で「五輪をやるのか」という国民の気持ちは理解できる。無理して開催しない方がいいのではないかという意見があるのは当然だ。

 国民は非常に不安になっている。我々もオリンピック・パラリンピック開催のことだけを考ようとは思っていないし、そうした不安を真摯(しんし)に受け止め、コロナ対策をしっかりやることは政治家として当たり前だ。

 しかし、オリンピック・パラリンピックには多様な要素がある。東日本大震災からの復興を世界に示すこと、日本の情報や技術・文化の発信、ユニバーサルデザインの社会や長寿健康社会を作るための契機――こういったレガシーもあるが、何よりもアスリートの思いを考えれば、中止するという判断はできない。

 選手たちは人生を左右する大勝負を経て、各国の代表を勝ち得ている。そして、その勝負に負けた選手も大会がなくなってしまえば「何のために人生を懸けたのか」となってしまうだろう。

 オリンピック・パラリンピックがもたらすものは大きい。私が副会長を務める東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、あらゆる困難を乗り越えて大会を成功させるために全力を尽くすことが使命だ。そして、安心・安全な大会の開催は十分可能だと考えている。

違反者の参加資格剥奪

 そのために最も必要なことが徹底した感染症対策だ。選手や関係者に安全・安心な環境を準備することと、海外から来日する関係者と日本在住者の接触を最小限に限り、日本の皆さまの安全・安心を守ること。この両立を実現する。

 海外の選手・関係者は、出国96時間以内に2回、日本に入国する際に1回、さらに選手村で原則毎日PCR検査を受ける。

 また、発熱センターを選手村に設置し、陽性者が出た場合は隔離して対処する。選手たちに用務先や競技会場、宿泊施設以外での行動は制限し、一般の日本人との接触を回避するよう動線を設定する。報道関係者も指定された場所での取材に限定する――など、さまざまなルールを作り、違反した場合には、選手は大会参加資格を剥奪される。

 このような対策は海外の関係者からは「やりすぎではないか」といわれるほどだ。さらにファイザーが日本を含めた世界の選手へのワクチンの無償提供を申し出てくれており、これも安全面の後押しとなる。

 現時点で75%、おそらく80%以上の選手がワクチンを打って来日する見通しである。

 ゴールデンウイーク前後に行われた四つのテストイベント(バレーボール、水泳飛び込み、マラソン、陸上)では、4大会合わせて50カ国、700人以上のアスリート、6000人近い大会関係者が参加した。

 この中で、コロナの陽性者が出た事案は1件。4月28日に、FINA飛び込みワールドカップのために来日したコーチ1人が、空港検査で新型コロナ陽性となった事案があったが、検疫所が指定した施設に移動。濃厚接触者が認められなかったことも速やかに確認した。

 テストイベントは、これまで検討してきたコロナ対策が実際に機能することを実証する重要な機会となった。

医療スタッフ「掘り起こし」も

 また、医療従事者も国民を不安にさせないように確保していきたい。

 五輪の医療スタッフとして看護師500人の派遣を看護協会にお願いしたが、そのことに対する反発は大きかった。医療関係者にとっては「コロナ対策で忙しい医療従事者を取らないでほしい」というのが本音だろうし、その不安は理解できる。

 コロナ対策で医療スタッフが不足にならないよう、勤務は難しいが数日だけなら手伝えるというような「潜在看護師」の方にもお願いするほか、医師会や看護協会と丁寧に話して不安を取り除きながら準備を進めていきたい。

 競技会場の医務室などで活動する医師については、日本スポーツ協会の公認スポーツドクターへの200人程度の募集に対し395人の応募があった。募集数を上回ったが、手を挙げた方にはぜひとも協力を願いたい。

 スポーツドクターとして活動している医師は、日ごろからスポーツ選手と行動を共にする機会は多く、アスリートにも親近感がある。「自分の仕事の合間に手伝う」といってくれる医師も多い。

 こういった掘り起こしも含め、医療体制に影響を与えないよう、大会運営に十分な医療スタッフを確保していく考えだ。

 また、海外からの観客は入れないことになったが、選手をはじめスタッフなども含めて多くの人がオリンピック・パラリンピックに伴い、入国する。

 選手は五輪約1万1000人、パラリンピック約4000人。選手団関係者、大会関係者、放送関係者等は延期前の約18万人から7.8万人へと、半分以下とした。…

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遠藤利明

元五輪担当相

1950年生まれ。山形県会議員を経て93年衆院初当選。建設政務次官、副文科相などを歴任。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会副会長。衆院山形1区、当選8回。自民党。