
人口で見ると20.7%、国内総生産(GDP)ならば23.6%、乗用車の生産台数は50.3%――。
韓国・ソウルに赴任して約1カ月後に手にとった「2019 日中韓三国統計集」は、日本と中国、韓国の3カ国が、世界にもたらす影響力の大きさをわかりやすく解説した一冊だった。
最初に並べた数字は、日本と中国、韓国を「一つの塊」と考えた場合、世界に占める割合がどれぐらいに達するかを算出したもの。日本語版は昨年10月に完成し、同じ中身の英語版、中国語版、韓国語版も出されている。
作製したのは、「日中韓三国協力事務局」(TCS)。名前の通り、日中韓の協力関係を加速させるために創られた国際機関だ。
とはいえ、現状は3カ国が一致して世界に影響を及ぼすどころか、それぞれの2国間関係でも懸案は山積している。協力関係を加速させるなんて、果たしてできるのだろうか。これからも、日本がTCSに関与していくメリットは本当にあるのだろうか。
10年目の節目 運営は3カ国で平等
「2019 日中韓三国統計集」の存在を知ったのは、TCSが2011年に創設されてから今年で10年の節目を迎え、写真展やシンポジウムをはじめとする記念行事を展開していたからだ。
TCS創設のきっかけは、09年の日中韓首脳会談。韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)が3カ国による国際機関の設置を提案したことにさかのぼる。本部は、地理的に中間に位置するソウルに。経済や環境、保健、防災などさまざまな分野で、3カ国による未来志向的な協力を加速させる役割を担っている。
日中韓首脳会談は元々、東南アジア諸国連合(ASEAN)に日中韓を加えた「ASEANプラス3首脳会議」の枠組みの中で開かれていたが、3カ国の持ち回りで年1回開催することになり08年に第1回目を開催。翌09年の会談当時はそれぞれの2国間関係がそれなりに安定し、米中関係も新冷戦と呼ばれる今ほどは悪化しておらず、日中韓連携に向けた機運が高まっていたこともTCS創設を後押しした。
運営は「3カ国の平等」が原則だ。職員数は32人で、日中韓の出身者がほぼ同じ人数となるように配慮されている。運営予算は360万ドル(約4億円)。こちらも日中韓で3分の1ずつ負担している。
公用語は英語。事務局長は、日中韓の代表者が2年ごとに持ち回りで務めている。…
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