中国が覇権主義的な動きを強めていることにはいくつかの背景があるが、一つのきっかけとしてはロシアのクリミア侵攻も考えられる。そしてその後、香港の問題が発生した。国連常任理事国の中露2国に対して他国が介入しにくいという認識が中国を勢いづかせた可能性が高い。
選挙を経ない共産党一党独裁の習近平体制の正統性は、国民に対し経済発展によって富を分配することと、「偉大な中国」というナショナリズムの2点に立脚している。
しかし、人口減少に転じる兆しが見えはじめ、同時に西部大開発や一帯一路構想の行きづまりにより、国内の過剰供給の行き先をこれ以上作ることが難しくなってきている。経済が厳しくなってきたために、後者の「偉大な中国」を打ち出す方向がより強まっている。
思われているよりも深刻
一昨年、昨年までは「台湾有事はすぐには起こらない」という前提で考えられてきた。それが香港での中国共産党の予想以上の強硬姿勢で、国際社会の見方が大きく変わった。
1995~96年の中国がミサイルを発射した台湾海峡危機よりも、より深刻な危機が差し迫っているという感覚を持つべきだ。中国軍の動きから考えれば、事態は日本の多くの方が思っているよりも深刻だ。95~96年当時は本気で台湾を侵攻することは中国も想定していなかった。しかし今は明らかに具体的な目標になっている。
日本の南西諸島、特に八重山諸島は地政学的・安全保障的に事実上台湾と一体だ。仮に台湾を失うようなことがあれば、日本そのものの存立が危機にさらされる。台湾有事は日本の有事そのものという認識でなければならない。
今、中国は実際に尖閣諸島で行動を起こしている。東シナ海や台湾周辺での中国の戦闘機や爆撃機の行動、訓練の状況なども見て、中国側がエスカレーションを続けるならば自衛隊の部隊配備などの対応も考えねばならない。
まさに緊張が高まるか否かのボールは中国側にある。中国側にエスカレーションの意思がなく、台湾についても行動を起こさないのならば、日本も対応する必要はない。…
この記事は有料記事です。
残り1307文字(全文2157文字)