西田亮介さんのまとめ

選択的夫婦別姓 愛や親密さを育むのは「姓」なのか

西田亮介・東京工業大学准教授
  • 文字
  • 印刷
西田亮介氏=木葉健二撮影
西田亮介氏=木葉健二撮影

 「呼びかけ」の記事<ご意見募集 西田亮介さんが問う 自民党の選択的夫婦別姓論に可能性は>を投稿してから、この間、100を超えるコメントを頂戴し、問題への関心の高まりを強く感じた。

 コメント欄の論調は圧倒的多数が選択的夫婦別姓に肯定的なものであった。むろん一般に現状や現状変更に対して強い問題意識や違和を持つ人が積極的に書き込みを行うだろうから、それなりに割り引いて読む必要はあるだろう。

現状改善に手を差し伸べる

 肯定的な意見で多く見られるのは、「選択的夫婦別姓は同姓にしたい人は同姓にすればよいのであるから、その人たち自身の現状変更は生じず、現状に違和や不都合を感じる人の選択肢を増やすので肯定する」という論調である。

 いま、そして将来も納得のうえで同姓を選択している人に別姓を迫るものではなく、現状に不満や違和を感じる人たちの現状改善に手を差し伸べるものであるという論理はとても強力に思えるだけに、現状の夫婦同姓の原則維持を述べるのであれば、相当具体的で説得力のある立論が望まれる。

男女は対等な環境で話し合っているか

 氏選択の非対称性に疑問を持つコメントもあったが、厚生労働省の調査「婚姻に関する統計」によれば、2015(平成27)年における夫の氏への統一は96%。平成を通して、ほぼ横ばいで推移している。氏選択において、現状、男性姓への統一が支配的であることは事実だ。果たしてこれが男女が対等な環境下で話しあってみての結果なのだろうか。

 「結婚の意義がなくなり、事実婚と変わらなくなる」というコメントもあった。婚姻を通じて世帯を形成することで税額控除や相続等における「優遇措置」の対象となる。姓を同一にしなければ、現状それらから排除されることになる。

 世帯の形成という実質的側面を重要視するのであれば、姓の統一は不可欠の要素に含められる必要があるだろうか。またそこにどれだけの説得的理由を見いだすことができるだろうか。なお俗名や旧姓使用ではこの問題は全く解消されない。

愛を育むのは

 「選択的夫婦別姓が夫婦関係や家族関係を弱める」とあるが、我々が愛や親密さを育むのは、姓やイエに対してであろうか。それともパートナーや子…

この記事は有料記事です。

残り625文字(全文1536文字)

西田亮介

東京工業大学准教授

1983年生まれ。博士(政策・メディア)。専門は社会学、公共政策学。著書に『メディアと自民党』(角川新書)、『なぜ政治はわかりにくいのか:社会と民主主義をとらえなおす』(春秋社)、『情報武装する政治』(KADOKAWA)、『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)など多数。近著に「コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か」(朝日新聞出版)。ツイッター @Ryosuke_Nishida